金魚すくい | ナノ
サクセラバージョン


【金魚すくい】



「行きましょうか、堺さん」

「あぁそうだな」

歩きだす二人。
いつの間にか手は繋がれていた。

「この浴衣可愛くないすか?見つけたときこれだって思ったんすよね」

「いいんじゃないのか?」

ですよね!なんて盛り上がっている世良を横目に堺は隣を見た。
レモンイエローにコスモスの花が散らばっており、帯は濃いめのピンク。緩く巻いた髪を左上でトップの部分だけまとめてある。
短めの世良の髪でもできる髪型だ。
今時の高校生が選ぶ浴衣よりもこっちのほうが断然世良に似合うと堺は思う。
もちろん言ってやらないが。

「堺さん!記念に写真撮りましょうよ!」

「写真?なにで撮るんだよ」

携帯に決まってるじゃないですか。そう言いながら携帯を取り出し、もう準備してる。
了解した覚えは無いんだが。そんなことを思いながらも向けられる携帯のカメラを覗き込む。

「行きますよー」

ピロリンなんていう音が聞こえ、世良が嬉しそうに携帯の画面を堺に見せる。

「綺麗に撮れたんじゃないか?」

「ですよね!後で堺さんの携帯に送っときます」

そういうと画像を保存し、携帯をしまいこむ。
再び歩き始めると、世良があっ!と声をあげる。
何か発見したようだ。

「堺さん、金魚すくいっすよ!やりませんか?」

あぁ。と堺が返事をすると、世良は一目散に走っていく。
手をつないでいるため、必然的に堺も走らなければいけない。
下駄履いているのに器用なやつだな。堺はそう思った。

二回分の代金を払い、ひとつは世良、もうひとつは堺がポイを持つ。
まずは世良からやるようだ。
よーし!やるぞ!!と張り切っていた彼女だが、縦横無人に動き回る金魚に翻弄され一匹も取れずじまいだった。

「あぁー!全然だめでした」

「あんな適当にやればな。まぁ見てろって」

そういい、今度は堺がはじめる。
世良のときとは比べる必要もなく、彼はひょいひょいとすくっていく。

「うわ!堺さんうまい!!どうやってるんすか?」

「金魚すくいにはコツがあってな。金魚をそのまますくい上げるんじゃなく、寝かせてすくうといいんだよ」

結局堺は8匹の金魚をすくった。

「これやるよ」

「え、いいんすか?ありがとうございます!」

大事に育てますね。といい世良は金魚を見て微笑んだ。


祭りはまだ始まったばかりである。


END.

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