【数年後設定/ベテラン陣引退済み】
今のETUにはドリさんもコシさんも丹さんもガミさんも堀田さんもいない。
堺さんもいない。
皆引退してしまったからだ。
ここ数年で、ベテランと呼ばれていた人達はほとんど引退した。
代わりに、新しく入ってきたやつらも沢山いる。
今は若手と呼ばれた俺達がETUを引っ張っていると言っても過言ではない。
俺もあと数年でベテランと呼ばれる歳だ。
今でも20番を背負っている。
練習が終わった後、俺だけ監督に呼ばれた。
「なんすか?監督」
「うん。そろそろいいかなと思って」
「…なにがスか?」
なにがいいのか全然わからない。
俺なにかしたっけか?
「これ」
そう言って監督は俺に、手に持っていたものを見せた。
それは背番号がかかれた―――9番がかかれたユニホームだった。
「これ…」
「うん。堺の背負ってた9番のユニホーム。今度の試合からはお前が9番だ」
「…え?」
「本当だったら選手が引退したときに背番号を変えるんだけど、堺に頼まれちゃってね。世良が育ったとき、―――9番を背負うに相応しい選手になったときにこの番号を世良に託して欲しいってね」
「………」
「受け取ってくれるよな?」
監督はユニホームを持った手をこちらに差し出して言った。
「堺の気持ちを。お前に託した思いを」
「…うす!俺、堺さんに負けないようなFWになります!!」
ユニホームを受け取った後、監督は俺の頭をポンポンと数回優しく叩き、踵を返して行ってしまった。
そこにぽつんと立っていた俺は、憧れの先輩が背負っていた背番号を見た。
それは―――そのユニホームは、彼が着ていたときと全く同じ輝きを放っていて。
彼が引退をしたとのことを鮮明に思い出させ、ユニホームに顔を埋めて少し泣いた。
「堺さん。俺あなたの背番号を引き継いで、あなたに負けずとも劣らないFWに絶対なります」
受け継がれる
軌跡、夢や思い。
END.