どんな君でも | ナノ

「おわぁぁぁぁ!!」
「…うっせーな、何だよせ…ら…」

まだ太陽が昇りきっていない早朝に、隣で悲鳴を上げて飛び起きた人物に叩き起こされ不機嫌になった堺は、隣にいる人物の変化に気付いて絶句した。
身体が動くたびにプルンと揺れる胸、くびれの目立つ細い腰。
悲鳴も上げたくなるだろう、彼女…もとい彼は、己の性別が変わってしまった事に驚愕していた。

「さささ堺さん!俺、女の子になっちゃったっスー!!」



■どんな君でも■



混乱する世良をよそに、半分寝ぼけている堺の頭の中は"どーせ夢オチだろ"ぐらいの面倒くさそうな顔をしていた。

「ちょ、そんなどうでも良さそうな顔しないでくださいよー!」
「あー悪かった悪かった。じゃあ、とりあえず…」

何か元に戻るための案でもあるのか、と目を輝かせた世良だったが、自分の上に覆いかぶさってくる堺に戸惑いの色を隠せない。

「さ、堺さん…?」
「この状況でやる事はひとつじゃねぇ?」
「ちょ、マジすか…ンッ!」
「少し黙ってろ」

異論を唱えようとする世良の唇を己の唇で塞ぎ、堺は興奮を抑えながら冷静に考えた。

世良が女だったら、と考えた事は幾度と無くあった。
こんなにコソコソと隠れるように付き合わずに、もっとオープンで幸せな交際が出来た事だろう。まぁ今でも十分幸せな事に違いは無いのだが。
手を繋いで歩くだとか、結婚するだとか…子供を作る事もできる。
別に男の世良がどうこうってんじゃなく、女だったらまた違う人生が自分にも世良にもあったろうな、と考えてしまうのだ。
世良自身に惚れてしまい、ただ単に惚れた相手が同性だっただけなのだから仕方ない、と今まで割り切っていた感情が掻き乱され、堺の心はザワついた。
(俺はどっちだって構わないんだ。世良が世良なら愛せるし、幸せにしてやるだけだ)
そう考えて心を落ち着かせ、堺は自分の下で組み敷かれている恋人を見つめた。

「さ、堺さぁん…」

不安そうに瞳を潤ませる世良は、どこからどう見ても誘っているようにしか見えなかった。
はちきれそうになっているパジャマのボタンを外していく。
止めようとする世良の声に聞く耳も持たず、全てのボタンを外した堺がゴクリと生唾を飲んだ。
ふる、と揺れる胸はどう見ても大きく、サイズまで予想できないが確実に手のひらから零れるくらいはあるだろうと見て取れた。
堺もそれなりに女性と付き合ってきたが、ハッキリ言って元カノ達など目ではなかった。

「えっろ…」
「も、そんなジロジロ見ないでくださいよ!恥ずかしいんスからっ」

観念したのか、半ば投げやりになった世良が四肢を投げ出したまま顔を背けた。
耳まで赤くなった世良に、どうしようもなく口角が上がる。

「…なんスか?」
「いや、女になってもやっぱ可愛いな、お前」
「んなっ…!」

さらに顔を赤くして口をパクパクさせる世良。
なにをそんな悠長な、と言いたそうな世良に、堺は安心させようと言葉を投げかける。

「心配すんな。元に戻ろうが戻るまいが、俺が責任とって幸せにしてやるから」

我ながら歯が浮きそうだな、と言いながら堺は思った。少し苦笑してしまう。
言われた世良はと言うと…堺が見ると、ぽろぽろと涙を零していた。

「泣くなよ。女の涙は武器なんだぞ」
「さ、堺さんが突然カッコいい事言うからっス…」

泣きじゃくる世良の濡れる目尻を唇で拭ってやると、世良は嬉しそうに目を細めてそれを受け入れた。
胸に手を伸ばしてももう抵抗の言葉は出てこない。
唇を奪いながら、手から溢れる胸を揉みこむ。
久しぶりに触る女体はひどく柔らかくて、堺を夢中にさせた。
世良はと言えば、今までの男の身体で受けてきた愛撫とは全く違う快感に全身を震わせていた。
女の身体はこんなにも感じるものなのか、と驚く間もなく、快楽に流されだした。

「なんか…ヘン、ですっ…」
「気持ちいいの間違いだろ」
「ふぁ、ダメっ…!」
「胸、感じるのか」

乳房を鷲掴んでグリグリと乱暴に揉む。それでも快感を拾う世良は喘ぎ続けていた。
堺の指が、ピンと上を向く果実を押し潰す。
電流が流れたようにビクビクと身体をのけ反らせる世良が、目に涙を浮かべて首を振った。
いつもの世良なら、乳首をいじられたくらいではこんなに感じない。
やっぱり女の身体になったから感じ方も違うんだろうな、と堺は思った。

仰向けになっても平らにならないハリのある胸に舌を這わせる。
白い肌は滑らかで柔らかく、甘い味がするような気がした。
乳房の周囲を、円を描くように舐めまわす。世良の息遣いは荒いままで、これだけでも感じている事が見て取れた。
ふるふると震えだしたのを見計らって、硬く熟した果実を貪った。

「ひぃんっ…!」

歯で甘噛みして、舌で転がす。面白いように反応する世良が可愛くて、ダメ、と言う世良の言葉を無視してその果実を味わいつくした。
堺が満足した頃、肩で息をする世良はハァ、ハァと熱っぽい吐息を吐きながら堺を見上げた。
気持ち長くなったと感じる睫毛が、世良の目をよりいっそう大きく見せていた。
浮かべた涙は今にも零れてしまいそうで、その扇情的な視線に煽られた堺は下半身にズクンと疼きを感じる。
(ああ、クソ。今すぐめちゃくちゃに犯して泣かしてやりてぇ)
なけなしの理性で自制した堺は、ふぅ、と息をついて世良のパジャマを全て脱がしに掛かった。

「待って、恥ずかしい、から…自分で…」

堺の腕を掴み懇願する世良の握力が弱弱しくて、ああコイツ今本当に女なんだな、と改めて自覚した。
わかった、と言って世良に背を向けた堺は、自分が着ていた寝巻きを脱いだ。
上半身が裸になった所で、背中にふにゅっと柔らかいものが当たる。
すでに裸になったらしい世良が背中から抱きついてきていた。

「…恥ずかしいんじゃなかったのかよ」
「こうしてれば、堺さんから見えないじゃないっスか」
「見てぇな。見せてくれよ、世良。お前の恥ずかしい場所、全部」
「っ…それ、反則っス…」

下半身にじんわりと湧いてくる熱。元男の世良はそれがどの場所からもたらされるものなのか分からなかった。
あるべき雄の象徴はそこになく、平らなそこには切られたようにぱっくりと割れ目があって。
童貞を捨てた時に見た事があるあの形が、今の自分にあると思うとなんだか恐ろしかった。
ここに堺さんのが入るんだよな、と思えば思うほど恐ろしい。本当に入るのだろうか。
今まで散々、雄を受け入れるためではない方の孔を使っていたクセにそんな事を考える世良。
まぁ言ってしまえばまだ未開通なその女性器にあんなグロテスクなものをぶち込むのだから分からなくはないが。
そして世良は、胸を弄られただけであんなに気持ちよかったのに、あれ以上の快感に襲われたらおかしくなってしまうのではないかと思った。

「早く見せろって」

ニィ、と笑いながら急かしてくる堺に、このドS!と心の中で悪態をついてみても当然相手には伝わらなかった。
抱きついていた手を離す。堺がこちらに向き直った。
ベッドの上で正座した世良は顔を上げられずに俯いていた。
堺の手が世良の肩を後ろに押す。バランスを崩し簡単に仰向けに倒されてしまった世良の脚を捕まえた堺が、膝を割って広げさせた。

「すげぇな、もうびしゃびしゃ」
「わー!もー恥ずかしい!」
「まだ触ってもねぇのにコレって、女になっても淫乱なんじゃねぇ?」
「ヒドイ…」

褒めてんだよ、と一言残して、堺は薄い茂みに唇を落とした。
割れ目の頂点にある小さな実を舌で捉えた堺が、溢れ出る蜜を絡め取るのと一緒に舐め上げた。

「ひゃぅぅんっ!…なに、いまのっ」
「お前知らなかったのか?女の一番感じる所はここなんだぞ」
「そんなの知らな…あうっ!やめてくださ…ソコ、だめぇ!」

じゅぷじゅぷと卑猥な音を立てて攻め立ててくる堺に骨抜きにされていく世良。
思考回路は鈍り、何も考えられなくなった。とにかくこの気持ちいい行為をずっとされていたいと思った。
割れ目から指が身体の中に侵入してくると、いよいよ子宮が本格的に疼きだす。
擦られる肉壁から与えられる刺激が心地よくて、頭がヘンになりそうだと思った瞬間。
ぷしゃぁ、と小さな音と共に水分が飛び散り、世良の身体から力が抜けた。
ガクガクと笑う膝と浮遊感に包まれ、恍惚の表情を浮かべる世良。

「…世良、お前」
「はひ?なんれすかぁ…」
「いや、何でもねぇ…挿入れるぞ、いいか?」
「もっときもちよくしてくれるんれすかぁ…?」

舌っ足らずな世良は細めた目で堺を見た。
堺が頷くと、世良は自ら脚を広げて見せた。もう羞恥心なんて言葉、世良の中には存在していない。ただ快楽を求めるだけ。

堺は痛いくらいに張り詰めた自身を、世良の割れ目に擦り付け、世良の愛液と絡ませた。
すぐにでも貫いてしまいたいのは山々だったが、何せ相手は処女と言ってもいい。
痛い思いはさせまいと、ゆっくり腰を押し進めた。
ぬぷぷっと入っていく自身を見て、堺は言いようの無い興奮を覚えた。
世良の顔を見ると感じているようで、赤く染まった頬に汗が伝っていた。
その汗を拭おうと手を伸ばすと、世良が嬉しそうに手に頬を摺り寄せてきた。

「ひゃ、おっきくなったぁ…」
「…お前が可愛いのが悪い」
「らって嬉しいんれすもん…堺さん優しい…」
「何だよそれ、俺はいつも優しいだろうが」

先程までの甘い雰囲気はどこへやら、男同士だった時のような会話に、二人はクスクスと笑った。

「動くぞ、キツかったら言えよ」
「はい…」

最奥まで挿入した先端にコリ、と当たるものを感じて、堺はその場所めがけて腰を打ちつけた。
きゅうきゅう締め付けてくる肉壁は、今まで関係を持った女性達とは全く違っていて、一番気持ちよかった。
そして世良が漏らす甘い声が、今までと違ってほんの少しだけ高い事にも興奮した。

限界が近づいて、堺はふと気付いた。避妊具をしていなかったのだ。
いつもは世良がしなくていい、と言うのでしないでする事が多かった為、すっかり頭から存在が消えていた。
さすがに、女体である世良に中出しする訳にはいかないだろう、と考える堺。
元に戻れる確証が無いのに、そんな危険なマネをする気は毛頭なかった。
いよいよ絶頂が近づき、イく、と宣言した堺が自身を引き抜こうとした、その時。
世良は脚を堺の腰に絡ませ、抜けないようにしてきた。

「バカ、離せって!」
「さかいさんの、なかに…くださいっ…」

湧き上がる射精感に抗えない堺は、そのまま世良の中へ熱を弾けさせた。

「―っくぁ…!!」
「あついの、でてるよ、さかいさんのぉ…!!」

嬉しい、とへらりと笑う世良が愛おしくて、堺は射精しながら世良を抱きしめた。





「おまえなぁ、身体が元に戻る保障はないんだぞ?妊娠したらどうすんだよ」

世良から掻き出した精液を受け止めたティッシュを、ゴミ箱に投げ入れた堺が不機嫌そうに呟いた。
大きな目をぱちくりさせた世良は、ニィっと笑って堺の腰に抱きついた。

「だって、どうなっても責任とって幸せにしてくれるんスよね?」
「…確かに言ったけどよ」
「俺、このまま女として生きるなら堺さんの赤ちゃん産みたいっス!」

満面の笑みでとんでもない事を言ってのけた世良に、思わず堺も笑ってしまった。

「はは、女になっても面白い所は変わんねーのな、お前」

あと淫乱な所も、と付け足した堺に世良は顔を赤くして、そんな事言うと赤ちゃん産んであげないっス!と応戦した世良。
笑いあう二人の影が重なり、静寂が部屋を包んだ。



性別とか、見た目とか、関係ない。
(性別とかそんな事は関係ないみたい)
世良が世良でいれば、俺は世良を愛するだけの話。
(堺さんが、世良恭平が好きだって言ってくれたから信じるだけ)
全身全霊で、幸せにしてやるから。
(幸せにしてくださいね、堺さん!)



END
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