あなたの手で | ナノ

「なぁなぁ、世良」
「何っスか?キヨさん」
「…どうしたらさ、そんなに胸大きくなる訳?」
「揉まれればいいんスよ!」
「はぁ?」
「だって俺、堺さんに揉まれてからですもん。大きくなったの」



■あなたの手で■



そう、堺さんと付き合う前のバストサイズはCカップで、まぁ普通だよねって程度だった。
堺さんと付き合い始めて、あれよあれよと言う間に3サイズもアップしてしまい、今はFカップ。
えふって…どんだけ…?
今日のキヨさんみたいに、周りの女子からよく羨望の眼差しで見られるけど、そこまで良いモンじゃない。
サイズ合う下着があまり無いし肩凝るし走るのに邪魔だし変なナンパとかよくされるし!AVには出ません!
…まぁ、堺さんが喜んでくれるなら、大きい胸でもいいかな、とは思うけどね。

そんな事を考えているうちに、世良は堺の家に着いた。
玄関に鍵が掛かっているので、堺はまだ帰ってきていないらしい。
貰っている合鍵で家の中に入る。買い出して来た食材の入った袋を床に置いた。
(さて、今日はどうしようかな…。うん、アレでいこう)
鼻歌を歌いながら、世良は着替えの為に部屋に入った。



一時間程して、堺が練習を終えて帰ってきた。
玄関を開けてただいま、と声を掛ければ、いつものように彼女がすっ飛んでくる。
が、いつも通りではない彼女の服装に、堺は言葉を失った。
淡いピンクのエプロン、残りは素肌。
目を輝かせて堺の反応を伺う世良は少しだけ前かがみになり、上目遣いで堺を見上げた。
分かっててやっているのかは分からないが、エプロンから覗く胸の谷間が堺を煽る。

「お帰りなさいっス!」
「…あぁ」
「で、コレどうっスか?グッと来ました!?」

"褒めてくださいオーラ"全開の世良に、堺はため息をつく。

「…お前な、よく恥ずかしげもなくそんな格好で玄関に来れるな」
「あ、堺さんコレ裸エプロンだと思ってるでしょう!実は違うんスよー!」

何が違うんだ、と堺が言いかけたその瞬間、世良はくるりと身体を反転させた。
チューブトップタイプのビキニの水着を身に着けている。
水着の布地はエプロンに隠されていて、上手い事見えていなかったのだ。

「さすがに裸エプロンは恥ずかしいんで、それっぽく見えるようにしたんスよー」

無邪気に話す世良の背後で、一人の男の理性の糸が切れた音は、世良の耳には入らなかったようだ。
突然背中から抱きつかれて、身体を硬直させる世良。
首筋に顔を埋めた堺は、その柔らかな肌を舌でなぞり出す。

「ぁ…さかい、さん…?」

不安げに自分の名前を呼ぶ彼女の耳元まで舌を這わせた堺は、低い声で呟いた。

「水着、脱げよ。お前の恥ずかしがる所が見てぇ」
「んっ…い、じわる…ッ!」
「黙って脱げ」

抱きしめていた腕を放すと、堺から開放された世良は堺をキツく睨みつける。
が、堺の目は"早くしろよ"と訴えかけるように睨み返してきた。
羞恥心で顔を赤くしながら、おずおずとビキニに手をかける世良。
身体は堺の方を向いたままなのでエプロンで隠れてはいるが、目の前で自ら脱ぐと言うのはなかなか恥ずかしかった。
ビキニを脱ぎ、本当の裸エプロン姿の世良を眺めながら、堺は込み上げる笑みを手で隠して平静を装った。

「そういえばここ玄関だったな。さすがにマズイから寝室に移動するか」
「はぃい!?」
「ホラ、早く行けよ。それとも台所がいいか?」
「…し、寝室が、いいっス…」
「先に行けよ」

いくらバカだと周りから言われる世良でも、堺の意図が何なのか読み取れた。
裸エプロンは背中がガラ空きだ。自分の後姿を見たいのだと世良は感じ取った。
普段も見られているというのに、こんな格好をしている時だけは恥ずかしいから厄介だ。
世良は背中を壁に付けて、そろそろと移動した。その可笑しな動きに、堺はもう笑みを隠さなかった。

やっと寝室に入ったと世良がホッとしたのも束の間、すぐ後ろから入ってきた堺に捕まって再び背中から抱きしめられた。
スルリとエプロンの下に滑り込む堺の手は、胸と下腹部をまさぐってくる。

「…お前、もう濡れてんぞ」
「うるさいっスよっ…!…あっ!」
「服脱いだだけでもうこんなんかよ。指入っちまったぞ」

堺の指が世良の中に侵入する。すでに濡れているソコは堺の指を歓迎し、きゅうきゅうと締め付けた。
ぐにぐにと肉壁を押され、押し広げられる感覚に、世良の口から甘い息が漏れる。

「はっ、あん…、さかい、さん…」

立ったまま行われる淫行に、世良の脚の力が抜ける。
へたり込みそうになる世良を抱きかかえて、堺はベッドへと運んだ。
世良の背中を壁にもたれかけさせて座らせる。そして脚を開かせれば、エプロンが丁度世良の大事な場所を隠す形となる。
そこに手だけを滑らせて、再び指を挿入した。
お互いに触れ合っている場所が見えない分、触覚を頼りに興奮を高める。
堺の場合は視覚も合わさって、いつも以上に興奮しているのが自分でも分かったようだった。
壁に背中を預け、目を瞑って喘ぐ世良の肩にかかっているエプロンの肩紐をずり下ろす。
両方の肩紐が落ちれば、露わになる豊満な胸に、堺はゴクリと生唾を飲んだ。
全て脱がすのとはまた違う、淫靡な色気を纏った世良の姿に、どうしようもない程欲情していた。

「あ、あっ、だめ…イっちゃう、あーっ!!」

増えた指と、親指で同時に刺激されたクリトリスにより、世良の身体はいとも簡単に達してしまう。
どうやらいつも以上に興奮しているのは堺だけではないようだ。堺の口角が上がった。
指を引き抜き、堺は服を脱ぎだす。全て脱ぎ去れば、残されたのは欲に駆られる陰茎と、獣じみた雰囲気を孕んだ一人の男の肉体だけ。
理性なんてものはとっくの昔にぶっ飛んでいた。

「…世良、俺のも良くしてくれ」
「はぃ…」

ゆっくりと身体を起こした世良は、ベッドに腰掛けて床に脚を投げ出している堺に近づいていく。
ベッドから降りて堺の両足の間に膝立ちになると、両胸で堺の陰茎を挟み込んで扱き始めた。
目の前で繰り広げられる痴態に、堺の陰茎は硬度を増していく。
世良は目の前にある堺の熱に唾液を垂らし、胸で揉みこんでいった。
柔らかい胸でヌルヌルと扱きながら、世良は器用に亀頭をチロチロと舐める。
上目遣いで堺を見やれば、眉根を寄せて余裕のない表情をしていた。
そうさせているのが自分だと言う事実が嬉しくて、世良の愛撫に熱がこもる。
胸の先端の方を持ち、硬くなった乳首を亀頭と竿の段差部分に擦り付ける。
そして亀頭を咥えられる所まで飲み込み、舐め回して、先端を吸い上げて唇を離した。

「―ヤベェッ!!」

世良の口淫に夢中になっていた堺が突然声を荒げたと思ったら、世良の視界は一瞬にして白くなった。
頬を伝う白濁は胸元に落ち、胸の間に収まっていた陰茎はドプッドプッと断続的に精液を放ち、世良の胸を汚していた。

「すごい、いっぱい出ましたね」
「…エロいお前が悪い」
「な、何スかそれ!こんなにしたのは堺さんじゃないっスかー!」

谷間に放たれた精液が零れないように胸を寄せて持ち上げている世良は、唇を尖らせて反抗した。

「胸おっきくなったのも堺さんのせいですよ!おかげで今日もキヨさんに聞かれたんですから!」
「…何を」
「どうしたら胸大きくなるのか、って」
「…で、何て言ったんだ」
「揉まれれば大きくなりますよ、俺も堺さんに揉まれて大きくな「あーもーいいから喋るな」

再び唇を尖らせた世良の身体をティッシュで拭いてやろうとする堺だったが、世良は拒否してきた。
何故だと問えば、少し嬉しそうにはにかむ世良は自分の胸元を見つめながら呟く。

「俺が堺さんのモノだって言う印みたいで、ちょっと嬉しいっス」
「…バカだな、お前は。もういつだってお前は俺のモンだ」

そう言いながら唇を奪う堺に、世良は嬉しそうにとろんと目を細めてそのキスを受け入れた。


その頃のキヨ


「ね、ねぇ、ハマ…」
「んー?どうしたキヨ」

ソファーに並んで座る二人。肩が触れ合う位の近さ。
随分前に石浜が何気なく点けたテレビの音声も、清川の耳には全く入っていなかった。

「どうしたんだよ、何か悩み事?」
「悩み、って言うか…」

口ごもる清川だったが、石浜は優しく声を掛ける。

「どんな話でも怒ったり引いたりしないから、言ってみろよ」
「そのっ…、も、揉んでくんない…?」
「あぁ、全然いいよそのくらい。肩か?それとも腰?」
「む、胸…なんだけど…」

一瞬の沈黙。

「や、やっぱ今のナシ!忘れて!」
「…キヨ、どうしたの?いつもなら触るなって言うのに」

真っ赤になった顔を隠すように両手で顔を覆う清川。
石浜は優しく清川の頭を撫でる。

「…世良に、聞いたら、揉んでもらうと大きくなるって…」
「うん」
「俺、胸全然ないし…世良みたいに可愛くもないし…」
「うん」
「ハマに、飽きられたら、どうしようと思って…っ」

段々と涙声になっていく清川。
石浜は両手で清川を抱きしめた。
「キヨ、俺はそんな事気にしてないよ」
「…え?」
「どんなキヨでも好きなんだ。そのままでいいんだよ、キヨは」
「ハマぁ…」
「それに、俺のためにあんな事言い出すなんて、俺からしたら凄い可愛いけど」

チュ、っと頬にキスをする石浜。
涙目の清川は石浜に抱きついて、ハマだいすき、と呟いた。



(でもせっかくだから揉ませてくれる?)
(…す、少しだけなら)
(キヨ大好き!)
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