てな訳で、吹奏楽部は候補から外そう。俺は演奏するより聴いてる方が好きだし、何より…楽器が使えない。カスタネットならギリギリいけるか…?いや、無理だな。

吹奏楽部が無理なら、無論、軽音部も候補から外れるな。あの某軽音部アニメの美少女5人や可愛い先生がいらっしゃれば話は別だったけど、生憎此処の軽音部は全員男子なのだ。非常に残念である。

とすれば、残る部活は美術部、演劇部…くらいかな?うちの学校は極端に文化部が少ないから困りものだ。もっと運動出来ない人の気持ちを考えろ、学校。
……あ!けど、運動部のマネージャーっていう手もあるじゃないか!何で今まで思い付かなかったんだろう。そうとなれば、まずは下見がてらに見学を…ふふ…これで部活動が充実して、俺は晴れてリア充に…!

「そこの黒髪の二年生!」

……周りには誰もいない。つまり、この声の主は俺に声を掛けて来たのだろう。呼び止められた為足を止めて渋々振り返ると、そこには小柄で幼い顔立ちの少年が居た。
この学園は制服の色で学年が解る。俺の場合、二年なので深い緑。一年は確か赤で、三年は紺青。
彼は俺とは違って紺色の制服だった。この一見中学生のような容姿の少年はどうやら信じがたいが制服の法則に従えば、俺より年上…つまり、三年であった。

「…え、と…俺、ですか?」

少年に対して敬語に抵抗があったものの、年上である事に違いは無い為に敬語口調。

「そう、キミだよキミ!」

少年は頷きながら、俺に歩み寄って行った。

「キミ…魔法とか、超能力とかに興味ある?」


……間。
時間の妖精さんが過ぎ去って行った頃、我に帰った俺は口端を引き攣らせながら口を開いた。


「…………はい?」

「だから、魔法とか超能力に興味ある?」

実に頭が吹っ飛んだ質問だ。
俺が聞こえてないと判断し、もう一度同じ質問を繰り返して来る。無垢なその顔に、からかっているのではないと悟ったものの…俺はそんな現実味も何もあったもんじゃない言葉に、不覚にも少し興味が沸いてしまった。どうした、しっかりしろ俺。ここは現実だぞ!

「…いや、その…まあ、あるには、ある……かなあ。」

…とにかくこの少年をとっとと追い払ってしまいたいが、少しくらいは付き合ってやるか…。俺は歯切れの悪い返事をしたのだが、それを肯定と捉えたのだろう、顔を明るませた少年は俺の手を掴んだ。

「そうとなれば、入部確定だな!ありがとう!」

「は?いや、まだ入部するとは…」

「レッツゴー!」

「だから待っ…ちょ、おいッ!」

人の話を聞かない少年は一方的に俺の手を引いて走り始めた。

この時振り払おうにも、引っ張る力が強かった為に敵わなかった訳なんだが…俺、案外貧弱だったのか…?

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