「で、こっちの奴はオレの幼馴染みで親友こと、涼代空佐(すずしろ くうすけ)!」

親指で日之坂先輩は後ろの人物を指しながら、涼代先輩とやらの紹介をした。……って、待てよ。空、佐……?いや、まさかな。ちょっと男勝った口調だけど、女の子だろ?女の子であってくれ。俺は踏み切った質問をしてみた。

「あ、あの…涼代先輩…って、ま、まさか…お、おと…男…?」

「当然さ。見た目通りだろ?変わった奴だな、お前。」

期待を裏切られました。涼代先輩本人が言うなら間違いは無いだろう。あの時、この美少女…じゃなかった美少年に危うく恋心を抱きかけた俺って一体……。つか見た目完全美少女だろっ!こんなん詐欺だ!いや、俺が勝手に間違えた訳だけど…なんだ、このがっかり感。ダメージは相当なものだ…今の俺のHPは0、基マイナスを突破している。そこへまたしてもあの高らかな笑い声。

「オーッホッホ!新入部員に挨拶の一つくらいはしてあげてもよくってよ!私は五十土 來華(いかづちらいか)。今後、私の奴隷として私に貢献なさい!」

「…よろしく。」

あぁ、俺のHPは何処まで下がり続けるのだろう。と、そこで瞑想をしていたシズミヤさんが伏せていた目を開いた。

「……雨宮静流(あまみや しずる)。通称シズミヤ。よろしく。」

ほんの三言述べた後、シズミヤさんはまた双眸を伏せて瞑想を開始した。一先ず名前だけはきっちり覚えさせて頂きました。

「…で、新入部員。お前の名前は?」

此処にいる人達の自己紹介が終わった時を見計らって、涼代先輩が俺に質問を投げ掛けた。そういや、まだ名前すら言って無かったな…。

「えー…と、俺は佐藤七四です。」

「名無し?…はっ!ま、まさか名前が無いのか?!」

「い、いや!その名無しじゃないです!…ななは漢数字の七。しも漢数字の四。二つ並べて七四です。」

日之坂先輩からのボケ(なのか?)を全力でつっこんだ。名無しって…手抜きすぎにも程があるだろ。愛情なんてあったもんじゃないな…。

「なーんだ、そうだったのか〜。」

いや、普通そうだろ。七四って名前は確かに珍しいけど、名無しって事は無いからな。

「ごめん、部長。思っていたよりも委員会が長引いちゃって。…おや?そっちは?」

ふと開いた扉から聞こえてきた、男でも聴き入ってしまいそうな少々高めの綺麗な男声。そちらに顔を向けると、そこには校内にも関わらずキャスケット帽子を被った糸目…?って言うよりは、微笑を浮かべる青年がいた。制服の色からして、三年生かな?申し訳なさそうに眉根を下げながら謝罪の言葉を述べる青年は、どうやらこちらに気付いたようだ。

「こいつは、佐藤七四!宅力部の新入部員!」

…ああ、もう駄目だ。ここまで来ては撤回出来ないだろう…。くそう、さらば我が青春。一年間この部活で過ごさねばならないのか…。

絶望に陥っていると、キャスケット青年は顔を近付けてきた。
俺は思わずドキッとしたが、改めて見ると目鼻立ちがちゃんとしてて、しかもスレンダーで長身だからかっこい…いかんいかん、俺は何を考えているんだ。そっちの世界に目覚めたら人生終わりだぞ、しっかりしろ、俺。
キャスケット青年は顔を離して自己紹介を始めた。

「僕は岩澤閏一(いわさわじゅんいち)。うーん…あと、僕は制服の通り三年生。自己紹介はこれくらいかな?よろしくね、佐藤君。」

「は、はい!よ、よろしくお願いします…」

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