何と言うか…その人物は、めちゃくちゃ可愛かった。俺より一つ年上らしく、制服の色はこのちっちゃい先輩と同じ。しかし気になるのは、この先輩が男子用の制服を身に纏っている事だ。
…一先ずそのめちゃくちゃ可愛い先輩の見た目を説明しますと…肩に掛からない程度の黄緑がかった優しい色のふんわりとした髪に、今にも吸い込まれてしまいそうなぱっちりとした空色の瞳。瞳を縁取る睫は長くて、顔立ちは少々幼め。色白で細身且つ華奢。背丈は俺と同じか、少々低めといったところだろうか…とにかく、可愛い以外に形容する言葉は、綺麗!美人!端麗!大和撫子!……みたいな褒め言葉しか出ない。
「よろしく、新入り。」
と、その人物は長袖から露になっている白く細い指先で俺の手を握って握手を交わした。何だろう、この幸福感は。
「あ、はい!よ、よろしくお願いしますっ…!ところで、せんぱ――」
「オーッホッホ!相変わらず退屈そうですわね、この愚民どもっ!」
俺はその人物と更に接触し、仲良くなる事を試みた矢先に高らかな甲高い笑い声が場に響いた。思わず振り返ってみると、そこにいたのはまたしても美人。しかし、少しツンツンして美人には美人だがなんか近寄り難い印象が強い。
「私(わたくし)がアナタ達の暇潰しに付き合ってあげますのよ?感謝なさい!」
…な、何なんだこの高慢ちきな女は…。つか、愚民って……。俺が呆気にとられている中、ちっちゃい先輩がその女に声を掛けた。
「そんなんわかってるさ!お嬢は優しいもんなっ!」
お、お嬢って…。
すると、小さくもよく通る声が俺の耳に入って来た。
「…静かにしてくれる?喧しいと、瞑想に集中出来ない。」
その声は奥の方からのようで、見てみると茶色の髪を腰まで伸ばした眼鏡の少女が椅子にちょこんと座っていた。端麗な顔立ちに貼付けられた無表情…制服の色からして、こちらも俺と同じ二年生、らしい。
「シズミヤ、ハチとイワンは?」
「…ハチは今日はバイトで来れないって。イワンは…知らない。」
「そか。そういや、ハチの奴コンビニでバイトをする事になったで御座る、なんて言ってたもんなぁ。」
このご時世に御座る調!?は、ハチってどんな奴なんだ…?不思議で敵わん。イワンに関しては俺も全くわからない。
まあ、このシズミヤって呼ばれた女の子もなんかミステリアスだけど…。
「っと、改めて…帰宅部じゃなくて実は超能力者の集合所、略して『宅力部』へようこそ!オレは、部長の日之坂晴樹(ひのさか はるき)!よろしくな、新部員!」
「は、はぁ…よろしく…。」
宅力部って…余計に何の部活か意味がわからんのだが…。そのちび…あぁ、もとい、日之坂先輩に空気の抜けるような返事をする俺。