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こんな世界に生まれて来たくなかった、ときみは言った。空を見あげ、落ちてきそうな鉛色のそれは、まるで薄汚れた僕たちみたいだ。いや違うな。僕は汚れているかもしれないけど、きみはきれいな人間さ。だって僕は楽になりたいと願っているきみをこの場に留めておきたいと、結局縛り付けているだけの存在なんだから。でもそれを、間違ったことだと思ったことはないよ。僕にはきみが、必要なんだから。

揺れる煙草の煙が、きみの身体をまとわりついていく。出来ればその寂しそうな後ろ姿を抱きしめてあげたいんだけど、それは流石に僕も空気を読もう。ただその代わり、慰めの言葉はいかがかな。

「僕もこんな世界に生まれて来たくなかったけど、きみと出逢えたって思うと随分と楽になれるよ」
「あほくさ」

でもきみは鼻で笑うだけだった。



/大嫌いな世界を見下ろして



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