テキスト | ナノ

「人の役に立つと気持ちがいいよ」

そんなことをどっかの偉そうな人が言ってたので、それじゃあ僕も誰かの役に立ってみたいなと思った。だからスタンに「僕にやってもらいたいことある?」って聞いたら、「セックス」とか突拍子もないこと言われて。返事も何もできなかった頭の中がごちゃごちゃの僕はスタンに押し倒されて、まあ、結論を言えばシてしまったわけだ。
覚えていることといえば、スタンがやけに僕の名前を呼んでいたことと、ケツの穴が信じられないくらいに痛かったこと。今僕は動くことが出来ないからわからないけど、きっとベッドシーツには僕の血がぽつぽつ染み込んでるんじゃないかな?
・・・あー、早く起きたいな。それでさっさとこのベタベタの体を洗って、着替えて、飯食って、・・・あ、腹減ったな。
まだ寝ているスタン(そりゃ、あんだけ出せば気持ち良く寝られるよね。)にぎゅうぎゅうに抱きしめられているから動けない僕はこの空腹感をどうしようもできない。早く起きて離れてくれないかなあと思い、痛む腰を我慢して体を捻った。・・・お!よし、スタンの腕から抜け出せそうだぞ!
そう思いそのままはいずり出ようとしたところで、寝ているはずだったスタンによってベッドの中に引き戻されてしまった。

「カイル、おはよ」
「あ、スタン。おはよ」
「起きてたんだな」
「スタンこそ。てっきり寝てるのかと」
「ずっと起きてた」

へえ、ずっと起きてたんだ。てか、さっきからぎゅうぎゅう強く抱きしめすぎでしょ!
ぐいぐいとスタンの胸を押して苦しいことをアピールすると、案外すんなり腕を緩めてくれた。
このまま腕を離して、ついでに僕の家まで送ってくれればいいのになあと思う。僕は別にスタンとセックス(・・・っていうのかな。これ。)をしたかったわけじゃないし、ただ親友の役に立って気持ちよくなりたかっただけだし。こんな風になることを望んでたわけじゃなかったのになあ。早く家に帰りたいなあ。

「ねえスタン、帰っていい?」
「・・・はあ?」
「僕そろそろ帰らなくちゃ見たいテレビ番組に間に合わないんだよね」
「やだ」
「え?」
「駄目。せめて昼までは一緒にいろよ」
「もう昼じゃん」
「じゃあ夕方まで」

なんだこいつ。気持ち悪いくらいに僕にべたべたしてくる。
また僕を抱きしめる腕を強くしたスタンにだんだん嫌気がさしてきて、でも、なんだかちょっとだけいい気分。いつもクールなスタンが僕にこんな甘い面を見せてくれて、そりゃあセックスしてるときは怖かったけど、こういうスタンも嫌いじゃないなあって。
ゲイっぽいとか気持ち悪いとか心のどこかで思ってるけど、スタンの匂いを嗅いでたらそんなことどうでもよくなってきた。

結局人の役に立つと気持ちがいいだなんて難しいこと僕はわからなかったし、というか僕の場合気持ちがいいよりも痛かったし、でも。
親友とこうやって温かいような、幸せな時間を過ごせたことに関しては、どっかの偉そうな人に感謝したいと思った。



/これがきっと、幸せ
かたりさんから相互記念にいただきました。ありがとうございます!



- ナノ -