スタン、何してるの?」
「カイルの背中撫でてる」
「僕別に気持ち悪くないよ」
「知ってる。俺がしたいだけだから」
そう言ってスタンはその行為を続けるだけだった。よく僕が風邪で嘔吐したとき、優しく撫でてくれたそれと変わらない手つき。心地よかったのは本音だけど、何だか恥ずかしくてくすぐったくて、それ以上やられたくなくて、反らすようにスタンの顔を見ると、案の定唇を尖らせ、ご不満の様子。今度はあやすように僕が頭を撫でれば、首にスタンの腕が絡みついてきた。どうしたんだろう今日は。何だか、いつものスタンじゃないみたいだ。
「どうしたの」
「…」
耳元で囁いてみても、頭が少しだけ頷くように揺れただけ。どうしたの、って聞いて、うんって何だよそれ。やっぱり、今日のスタンはおかしいのかもしれない。だけどたまにはそうやって甘えてくれるのも悪くないと思うんだ。だから僕は何も言わず、僕のやり方で甘えようと思う。
「ねぇスタン、好きだよ」
気持ち悪いかもしれないけど、気持ち悪いって言わないで。ごめんね。
/まっくろな睫毛の底に落ちてみたい