もう終わりにせぇへん?静かに耳元で、モールが僕に言う。いきなり話を振られたものだから、上手く頭が回らなかった。何をだい?もしかして、この行為のこと?未だに冷めない熱をお互いに持ち、溶け合うように身体を重ね、触れ合った。小さな声も動作も、何もかもが愛おしいよ。ねぇモール、もう一度言ってよ。何を、終わらすの?もしかしたらが告げる予想を、僕は心の何処かで否定していたかった。だって今最高に幸せだっていうのに、それを終わらせるなんて、流石のモールも考えていないはずでしょ?彼の肩が、小さく揺れた。
「俺、お前のそういうとこ嫌いや」
「何?」
「都合のいいように解釈しいへんとこが嫌いやねん」
起きあがり、酷く真剣な顔でモールは僕の顔を見ていた。僕が、都合いいだって?冗談も程々にして欲しいよ。これでも僕、毎日真剣に生きているんだよ?都合のいいのは、むしろ君の方じゃないかな。悲しいときも寂しいときも、僕を利用して置いて何を今更。白いシーツを握る、染みが広がる。彼の肩が、揺れた。
がちん、と音を立てて歯が当たった。きっと彼にとっては唇と唇を重ねるキスという行為だったんだろうけど、不器用だから歯が当たってしまったんだね。貪り食うようにそれを味わったけど、長くは続かなかった。離れるようにと、僕を押す彼の力は少しだけ震えていた。もしかして、本当に終わらす気なの?
「何、どうしたの」
「終わらそうと思ってん、もうええやん」
これが正しいと、きみは言うね。僕はそうは思わないけど。きみの考えていることなんて全くと言っていいほど、理解できないけど。さっきしたキスの味が、未だに残っているよ。暖かくて優しかった。きみからするなんて、滅多にないことだから嬉しかったよ。だけど浮かれていたのはもしかして、僕だけだったかい?
「今までおおきに」
にかっと歯を見せて笑ったのが見える。肝心なときに動かないのは誰の身体?今、きみの手を掴んで引き寄せたなら、考えを正してくれただろうか。いくら背徳的だろうと、構わない。気にしない、だから、お願いだから――。何を言っても、きっと無駄だろう。きみは聞き分けが悪い。一度決めたことは、最後まで押し通すよね。
でも何で、そんな泣きそうな顔するんだ。
/グッバイやわらかいあなた