最近になって歳をとるのが非常に怖くなった。
といっても、年下の少女との間にうっすらとした溝ができていることに気づき始めたのが二十歳を少し過ぎたぐらいの頃なので、全体の期間を考えるとそう短くはない。

紺色のスカートの女子学生を見ると、あの忌々しい女の顔がちらつく。若さという私には勝ち目のない圧倒的な武器を持って何ともないような顔をしているあの娘の顔が。

私が学生の頃はどうだっただろう。肉体の若さなど外見の美しさの添え物程度にしか思っていなかったように思う。歳をとることにも歳をとった同性に接触することにも、恐怖や侮蔑の感情を持たなかったはずだ。
外見の美しさで取り繕えるうちが花だ。いまではその外見の美しさにすら、陰りがでてきた始末である。
夜、シャワーの後に脱衣所の鏡に全身を映す。二の腕が心なしかたるんでいる気がする。胸の位置も、少し下がったのではないか。よく見ると、昨日まではなかった線のようなしわが一本、首を絞められた跡のように刻まれている。
そんな時に自分はもう白雪姫ではなくなって、むしろ白雪姫に嫉妬する女王の側に立たされていることを痛いくらいに感じる。

私は老いてしまった。
整形手術や医薬品や気の持ちようなんかで取り戻せるものなど何一つあるわけがない。
短いスカートを気にもせず友人とじゃれあう少女をねたましくにらみつけながら、ただひたすら老いるのだ。そうする者に対して、私が何の感情も抱くことなく接したように、きっとあの女も私に声をかけ、なんてことのない話をし、笑いかけるだろう。
白雪姫がいつの間にか歳をとり、お后様になって、新しい白雪姫に毒リンゴを差し出す。そんなループを女は繰り返しているのだ。最初の二十年は羨望され、後の人生は羨望し続けながら。

「お姉さんお姉さん!」

嫌だ憎いうらやましい。
あの女の根拠もなくただ若いと言うだけで敵無しのように高い声が。

「お久しぶりですお姉さん!うわーすごい美人さんがいる!と思って良く見たらお姉さんでした!なんで帽子とマスクで顔を隠してるんですか?お姉さん美人なんだからもったいないですよ!」






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