いやだよおかしいきもちわるいよへんだへんだへんなんだよだれかだれかってねぇ呼んでるじゃないかたすけてねぇねぇねぇねぇ!

「私たちの技術ではこれが精一杯か。」

「全力は尽くした。だが深部までやられていて完全には程遠い。」

「くそっ!どうしてこんなことに!」

ねぇねぇねぇねぇねぇ。
怖い話しないでよ聞こえないの聞こえてるよねこんなに叫んでいるんだもの。ねぇ。
ねぇったらねぇ。

「ああ、起きていたのかバンブルビー。ラチェットがとてもよくしてくれたんだ。」

「喉は痛まないか?何か痛み止めを持ってこよう。」

「ひでえ顔だぞ。まるでスパークが爆発したみたいだ。」

特殊金属の剥げた大きな頭が四つ、一斉にこちらを向く。
ああ君たちにはなんにもわかっていないんだな。なんだか全てが腹立たしい。喉の奥が怪我とは関係のない熱を持った。
イライラするんだおまえたちのいい人ぶった顔を見ていると。全てのケーブルを引きちぎってぐちゃぐちゃに叩き潰してやりたくなる。顔面を思い切り蹴り上げてスパークに隕石を叩きつけてやりたくなる。
想像すると肩の筋肉がぞわりと期待に震えた。のんきなおまえたちに、この感覚がわかるはずない。

「まだ大人しくしていなさい。傷ついたのは喉だけじゃないんだ。」

「そんなに暴れてどうしたんだ。」

「喜んでるんすよ司令官。よしよし、俺が抱き留めてやろう。」

ちがうちがう。そうじゃないんだおいらはおまえたちを殴りたいんだよ。ケーブルを引きちぎってぐちゃぐちゃに叩き潰して顔面を蹴り上げたいんだよ。
体が思ったように動かない。いい人面するな。抱き締めるな。おいらに触れるな。離せ離せ気持ち悪い。なんでこんな時に声が出ない。この体はおいらのだ。動かないなんてそんなはずない動け動け動けよ。

「馬鹿だなバンブルビー。みんなここにいるんだぜ。怯える必要なんかないだろうが。」

銀色の指は傷だらけだった。肩の装甲が外れかかって、その真新しいひびの入った表面は目に痛いほどライトを反射させる。いやだおいらに触るな、思って体を引き離すと、背後のブルーにかち当たった。それも銀色に負けず劣らず傷ついた、腹部に溶かされた跡が残るボディだった。力を振り絞って後ずさり奥の二体を確認する。黄色と黒の、やはりボロボロに痛んだ体。
なんだ、なんなんだおまえたちは。全員スクラップを無理矢理組み立てたみたいに傷ついて、とても気味が悪い。腹の底から嫌悪感が湧き、背筋に不快な電気が走る。

こんなにボロボロになってお前たちはなんなんだ。一体なにがしたいというんだ。

「混乱してるんだな。安心しろ。俺たちは無事だ。お前も一時はどうなることかと思ったがなんとか助け出せた。不便だが、どうしても伝えたいことがあったら通信回線を使えよ。なんかあったらすぐに呼べ。マッハで駆けつけるからな。」

通信回線なんて使わない。すぐに駆けつけて欲しくもない。何かあったときにおまえたちの顔なんて絶対見たくない。
銀色は簡単なリペアも済んでいない装甲の割れた手を差し出す。おまえたちはわかっていなさすぎる。イライラするんだ。自分に都合のよい勘違いをおいらに押し付けるのはやめてくれ。

「(なんにも、なんにもだ。こんなにも一緒にいたのに、なんにもおいらをわかっていないよ。)」

頭までおかしくなったのか、と言うジャズの声がする。それをたしなめるアイアンハイドの声も、困ったようなラチェットとオプティマスの声もする。
ああいやだなあ参った。大切なときに声が出ない。おいらの体だろう。頼むから動いて見せてよ。痛いくらいに力を込めるけれど、ラチェットに治せなかった傷がどうにかなるはずなかった。
声が出たところで、のんきな彼らは笑って聞き逃すかもしれない。彼らはおいらをなんにもわかっていないから、精一杯叫んだって冗談か何かと取り違えてしまうかもしれない。

「心配するなバンブルビー、俺たち仲間じゃないか。」

違う違うそんなのじゃないったら。
どんなに力を込めても声は出ない。


「君達が傷つく前に死んじゃえばよかったね」って言えないよ。



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