彼はずっと眠ったまま動かない。動かないのではなく、手足をなくして動けなくなってしまったんだと思う方が気が楽になった。
芋虫のような彼が無抵抗なのを好いことに僕は彼を好きに出来る。そして散々犯した末、見苦しく許しを請う。
しかし卑怯であるより臆病な僕には到底叶わぬので、それなら始めから僕の手足ももぎ取ってしまおう。
僕が芋虫だ。僕を飼うのは彼――
「古泉一樹」
意識が現実に戻る。彼に手足はある。僕にも手足がある。
「寝るべき」
長門有希が僕を無感情に見詰めている背後で朝比奈みくるが落ち着きなく僕らを盗み見ていた。
寝不足と疲労も極限になれば僕でもこんな妄想に取り憑かれるのかと可笑しくなって少しだけ自棄になった。
「彼と僕が芋虫になる夢を見ました」
立ち上がると寝袋にくるまったまま寝返りを繰り返す涼宮ハルヒを踏みそうになり、思わず笑い声が漏れた。
芋虫は彼女だった。