古泉が笑う。
薄い唇の間から白い歯が覗いた。
「お前、歯ぁ真っ白な」
その嘘臭い顔によくお似合いだぜ。
「有り難うございます」
別に俺は誉めていない。ただ白かったから白いと言っただけだ。
お前って結構ポジティブだよな。
特に見渡す物もないので古泉の顔を見たまま呆けていたら、心なしか古泉の顔が上気してきた。
相変わらず一々気色の悪い奴。
態と無表情のままでこの不愉快さをアピールしてやろうと思ったのだが、それさえも自分に都合の好い様に勘違いしているらしい。
幸せだな、お前。
「あの、ご存知でした?」
何を。
主語くらいどうにかしろ。
真逆歯医者でホワイトニングしてるとか言うなよ。
「していませんよ。歯の漂白についてはもっと手軽な方法があるのです」
眉をハの字に垂らしながら身を乗り出した古泉の頭を押し返しながら、それがどうしたと先を促した。
「飲尿は歯の漂白に適しているそうです。ルネッサンス期から続く教えだそうですよ」
ほお。
「で?」
「別に」
別にってお前。この手は何だ。
「さあ」
また白がちらつく。
「まあ、俺に感謝するこったな」返事はない。
俺も大概ポジティブなのである。