屍姦

白いシャツを赤黒く染めた兄が平然と帰ってきた。ただいまと言う声は震えなど無く、聢り私を捕らえる。髪が少し乱れていたので手櫛で解かしてやると潰される様に抱き寄せられた。
「本気で殺そうと思ったのはお前だけだ」
それなら、本当に殺されて仕舞っても善いと思った。自分の戒名は何になるか考える程の余裕すらある。でも私の死体は棄てないで傍に置いていて欲しい。
兄にネクロフィリアの素質があったら如何しよう。
私の所為で兄が目覚めて仕舞ったら如何しよう。
「私はもう此処には居られないだろう」
「何故」
「お前も殺して仕舞うから」
「嘘」
兄にそんな気がある訳無いと高を括り乍ら、もしそれが真実で有ればと期待する。
私は愚か者です、兄さん。
人形のように死んだ私を愛玩して欲しい。そのような性的倒錯を楽しんで欲しい。死後硬直で私のそこは締まるだろう。
――屹度お気に召します。
吁嗟!私は何を考えている!
兄に行くなと媚びなければ。それなのに――
「命、私を許せ」
何故私じゃない。
私なら死体は屹度美しい。