怪人衣装上下セットマスク付き(革製)15800円

「え…何やってんのお前…」

「う、うわぁ…四川君…」

「四川貴様…」


「やめろ!そんな目で見んじゃねえ!」


どっからどう見ても四川であるが、なんなんだこいつは。怖いくらい似合っているのが逆に物悲しい。
『四川ー台詞台詞ー』とどこからともなく聞こえてくる野次(というより紀平さんの声)にハッとする怪人フォーリバーもとい四川。


「と……とにかく!残念なことに俺達にもそこのアホが必要なんだよ!」


そうずびしと指された指。
それはどう見ても俺に向けられていて。


「アホって……もしかして俺か?!」

「えらいねカナちゃん!よく自分だってわかったね!」


馬鹿にされているような気がしないでもないが、今はそれどころではない。


「冗談じゃねえ!なんで俺がお前らに協力しなきゃなんねえんだよ!」

「おい、もう忘れてんのかよ馬鹿。別に協力してもらわなくてもいいんだぜ?」

「は?…って、うわ!」


笑う四川(自称怪人フォーリバー)にどういう意味かと戸惑った矢先のことだった。
いきなり腰に腕を回されたかと思えば、次の瞬間体が宙に浮かぶ。デジャブ。


「カナちゃん!」

「原田!」

「残念だったなぁ、ま、頭脳派は頭脳派らしくクロスワードパズルでもやってろ!」


そう、人を荷物か何かのように担いだ怪人フォーリバーは店長たちに向かって吐き捨てる。恐ろしいくらい適役すぎて店長たちも返す言葉を無くしている。
気持ちは分からないでもないが、この展開はあれだ。やばいのではないだろうか。


「離せ、このっ」


そのまま通路を歩き出す昼間はしがないアルバイト、しかし真の姿は夜な夜な人を食い荒らす怪人フォーリバーこと四川の腕を引っ掻く。


「暴れんな、落とすぞこの馬鹿!」


馬鹿とはなんだ馬鹿とは!
でも落ちたくないので慌てて手を引っ込めたその時だ。


「なんの騒ぎで……って、原田さん!……と、え?!阿奈!?うわ、お前…その格好…」


騒ぎを聞き駆け付けたようだ。
不安そうに覗き込んでくる笹山は真っ赤な露出狂を見るなり青褪めた。無理もない。
そんな笹山の登場に、怪人フォーリバーは忌々しそうに舌打ちをする。


「チッ…来やがったな……行くぞ!暴れんなよ!」


その言葉と同時に走り出す怪人フォーリバー。
そんなことされたら担がれている俺にもろ衝撃が来るわけで。


「うおわああああ!!」

「カナちゃん!カナちゃーん!どうせならもっと可愛い悲鳴上げて!」

「うるせええええ!」


そんな器用な真似出来るか!そう言葉に鳴らない悲鳴を上げながら、俺はそのまま連れ去られることになった。



mokuji
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