盗聴は基本です

そして、俺と店長も店内へ向かうことになる。
店内へと繋がる職員用通路。

笹山の様子を見に行こうとした矢先、店長に腕を掴まれる。


「よし、笹山が店内に戻ったことだし俺達は犯人を捕まえにいくぞ」

「はっ?!」


一瞬言葉の意味がわからなかった。
あまりの爆弾発言に見事思考回路ショート寸前の俺に、店長は「む、どうした?」と不思議そうに首を傾げる。全く可愛くない。ではなく。


「は、犯人って…もう分かってるんすか…?」

「そりゃこんなことするやつ、一人しかいないだろう」


そう言って、店長はスーツから携帯端末を取り出した。
何やら操作をしてすぐ、背後の用具入れから何かが聞こえてくるではないか。

何事かと耳を澄ませれば、聞こえてきたのは…


『おい電話だぞ、さっさと出ろよ!うぜーんだよお前の着メロ!』

「こ、この人の声を勝手に録音した着ボは…!」


聞き覚えのある着ボイスというか先日の俺じゃねーか!こんな羞恥プレイどころか嫌がらせ染みた真似をするやつな一人しかいない。
咄嗟に、音の発信源、用具入れを開けばなんということだろうか。翔太がいやがった。というか詰まっていた。


「チッ!」


予想外の翔太との再会に更に脳味噌オーバーヒートしていると用具入れから飛び出す翔太。
咄嗟に動けないでいると、


「逃すか中谷!」


店長は素早く翔太を捕獲する。
あの逃げ足の速さだけは異常な翔太を素手で捉えるとは店長何者だと思ったけど今はそんなことを気にしている場合ではない。


「くそ、離せ!」

「しょ、翔太!お前先に帰ったんじゃなかったのか!」

「帰ったさ!帰ってカナちゃんのエプロンに忍び込ませたペン型盗聴器の音声を聞きながら次のイベントに向けて新しい衣装作ろうと思ったのにとんでもないことになってたから慌てて戻ってきたんだよ!」

「お前…………………………」


何か見慣れないペンがあるなって思ったらお前…。そしてなんでちょっとキレ気味なんだ俺もキレたいんですけど…。



mokuji
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