囮大作戦その一 司たちと別れたあとの休憩室にて。 「てっ、店長…どうするんですか、あんなこと言って…」 「大丈夫だ、あの脳筋集団にこの謎は解けん!」 「店長違いますよ!犯人を捕まえたらって話だったじゃありませんか!」 あまりの店長の無鉄砲っぷりに流石の笹山もぷりぷりしていた。 なんだかあれだな、確かに俺も店長にはこの野郎睫毛引き抜くぞとなったがこうも自分の代わりに怒ってくれる人間が居るというのは嬉しいものだな。 しかし、当の店長はどこ吹く風で。 「ああ、そうだ。力技では相手を捕まえることは出来ないということだ」 「だから俺達は頭を使う!」ババーンと効果音が付きそうだが、俺達は別の意味で衝撃を受ける。 「て、店長……」 「かっこいい台詞なのにものすごく不安なんですが…」 「笹山!俺を誰だと思っている?この町内一の知的頭脳派美形とは俺を知って言ってるのか?!」 ものすごく初耳だ。 というか規模が小さすぎる。 「とにかく!まずは知能派らしく状況整理といくぞ」 唖然とする俺達に構わず、気を取り直すように咳払いする店長。 「貴様らの話を聞くに、原田、そして時川にタライが落ちて、四川にも落ちた。…問題は何故紀平や笹山や俺に落ちていないかだ」 「紀平さんは怖かったからとか…ですかね」 「ならば四川はどうだ、あいつも人相はいいとは言えないはずだ」 あい、確かにそうだ。おまけに声でけーし態度もでけーしあの目付きの悪さ、紀平さんのがまだ愛想はいい。 「あの…もしかして、手が回らなかった、ということもあるんですかね」 少し考え込む笹山はおずおずと口を開く。 瞬間、 「その通り!!」 勢い良く反応する店長に思わず心臓が止まりそうになった。 「恐らく犯人は一人だ」 「本当ですか?」 「全く信用していないな貴様!」 信用していないというわけではない。けれど一人だと分かったところで犯人が捕まえられなければ司たちに何されるか分からないし不安極まりない。 「あとは落下する条件だ、それを辿っていけば自ずと犯人像は見えてくるはずだ」 「店長、分かってるんですか。犯人本人を捕まえないといけないんですよ?」 「勿論だ!分かってるぞ!」 そんな俺の不安を汲み取ったのか、笹山も笹山でどことなく緊張している様子で。 ますます全部嘘でしたと言い出しにくくなってしまう。 でも、今なら司がいない。 「とにかく、色々試して見る外ない。実験だ、笹山、お前ちょっとレジに入ってろ」 笹山、と口にし掛けたときだった。見事店長にセリフごと掻き消される。 「俺がですか?」 「ああ、俺と貴様どちらに落ちるかを試してみる」 「…分かりました」 頷く笹山。 笹山を囮にするつもりなのかと反論する暇もなかった。 笹山は早速店内に向かった。 |