修羅場3乗

「笹山…っ、あの」

「…すみません、すぐに片付けますので」


誤解なんだ、と言い掛けたとき、そそくさと出ていこうとする笹山。
誤解というか誤解ではないけど、事実だけど、あくまでもフリだ。
そう言いたいのに、それを言ってしまえば全てが台無しになってしまう。
一人決め兼ねていると、


「待って、透!」


紀平さんが笹山を引き止めてくれる。
もしかして、迷っている俺のために、と感動するも束の間。


「もう一個…もう一個ないの…?」


ケーキかよ!どんだけ食いたいんだよ!


「すみません、ないです…」


ほら笹山もめっちゃそこかよって顔してんじゃねーかよ!


「俺…拭くもの取ってきます」


今度こそ、生クリーム臭い脱衣室を出ていく笹山。
いても立ってもいられなかった。
俺に何をフォロー出来るのかわからない、それでも、あんな顔をした笹山を一人にすることは出来なかった。


「笹山!」


俺は司の手を振り払い、笹山の後を追いかける。




「原田さん…!」

「ケーキ…」

「なんだこの展開…」



mokuji
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