逃げ場確保

「つ、つつ、司……」


しまった、この展開はまずい。
咄嗟になんでもない振りしようとするけどどうしよう、頭が真っ白になって何も思い浮かばない。
それどころか。


「司君、すごいねえ、それ。バケツでも被ったの?」

「……別に。バケツじゃなくてタライすけど」

「ってことは、こいつが言ってたのって時川のことかよ」


まるでお前が犯人じゃなかったのかみたいな感じで落胆する四川。
当たり前だろうが!と突っ込みたかったが、俺はというとそれどころではなくて。
どうか、どうか、気付かれませんように。何をかと聞かれればあれやこれやと大量にあるのだが、取り敢えず全部。


「ん…待てよ?」

「な、なんだよ…」

「なら、まさか、お前…」


ハッとする四川。
まさか、気付かれたか、俺と司の間になにがあったのか。
一気に血の気が引いた時。


「時川とグルになって俺にタライ落としたな?!」


あっ、気付いてねえわ。よかった。


「ちげーから!つかなんだよ!お前そんなに俺を犯人にしてえのかよ!」

「だってお前と別れてからだぞ?!てめえが一番怪しいだろうが!」


無茶苦茶な!


「まあ、ほら二人とも落ち着いて。こういう時は甘いものを食べてリラックスするといいよ」

「それ、紀平さんが食べたいだけですよね」

「そんなことはいいから、ほら、俺特製ホットミルク〜」


いいながら生クリームを打ち込まれたマグカップを四人分運んでくる紀平さん。
紀平さんこれホットミルクじゃない、ただの生クリームです。


「それに二人とも、そんな格好で彷徨いてたら風邪引くだろ。着替えてきなよ」

「そ、そうですね!俺、ちょっと着替えてきます!」


珍しく紀平さんが助け舟を出してくれる。
こういう時は逃げるが勝ちだ。
何かを勘ぐられる前に証拠隠滅せねばならない。
その一心でシャワールーム前、脱衣室へ向かった。


mokuji
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