愛情の捌け口(物理)

「っぅ、あっ、あぁっ!司っ!つかさぁっ!」

「原田さん…っ」


揺さぶられる下半身。
突かれる度に声帯が震え、自分のものとは思えない、俄信じたくないくらいの声が漏れてしまう。
司の手が、触れた箇所が酷く熱い。


「んんっ!」


伸びてきた司の手が頬に触れたと思えば、再び近付いてきた司に唇を塞がれる。
今度は離れようともせず、深く貪るように重ね合わせられた唇から舌を挿し込まれた。


「ふっ、う、んっ、うぅ」


口と腹の中、両方の器官を司に犯され、他のことを考えることが出来なかった。
そもそもなんでこんなことになっているのか、俺はさっきまで便所掃除に励んでいたのではなかったのか。
磨きまくった鏡に映る、司とキスする自分を横目にぼんやり考える。
なんか大切なこと忘れてるような気がする。
けれど、それも腹の中を抉られれば意識とともに吹っ飛びそうになった。


「っぅ、ん、む…ッ」


息が苦しくて、じんじんと痺れる頭の中、息を吹き込んでくる司の舌にしゃぶり付き、もっとと強請る。
あれ、なんだっけ。もう少しで思い出せそうな気すんだけど。めっちゃ大切なこと。


「…は…ぁ、…っ」


司に目の奥覗き込まれるように見詰められれば、頭の中まで司でいっぱいになってしまいそうになるから恐ろしい。
長い舌先に口の中を掻き混ぜられ、流れ込んでくる唾液はそのまま喉の奥まで侵入してきて腹の中、司の熱に喉奥まで侵されてると思ったらぞくりと背筋が震える。
瞬間、下腹部に溜まりに溜まった熱が一気に外部へと押し出されるのが分かった。


「んんぅッ!」


何度目かの射精かわからない。
びゅっと鏡に向かって吐き出される精液の量は少ない。それでも鏡を汚し、垂れるそれを見るだけで恥ずかしさでいっぱいになってしまう。
射精の疲労感でぐったりしているところ、掴まれた腰を持ち上げられる。
そうだ、まだ終わっていない。

司は、まだ。


「…っ、原田さん、好きだよ…原田さん」

「っ、ふ、ぁっやっ、つかさ、ぁ、だめ、も、やめろってばぁ…っ」

「…なんで?…せっかく両思いになったのに」


……ん?両思い?
次第に冷静になっていく頭の中、どこか司との会話が噛み合っていないことに気付く。
両思いってなんだ、なんのことだ。ちょっと待て。
一周回って血の気が引いていく頭。
「司」と、取り敢えずやつを止めようと振り返ろうとした矢先、どくんと身体の中で司の脈が打つのがわかった。
瞬間、身体の中、ぬるぬるとローションと先走りを塗り込むように腰を動かしていた司のものが一際大きくなる。


「っぁ、うそ、なんで…ぇ……っ」

「は…ッ」

「んっ、ぁ、あっ、ああッ!」


なんで、まだデカくなるんだよ。
腹部を圧迫するその質量に戸惑う暇もなく、腰を打ち付けられる度にその衝撃に意識が飛びそうになる。
冷静になりかけていた脳味噌に熱が回り、また、何も考えられなくなった。


「あっ、ひ、いッ」

「…原田さん…っ、名前、呼んで…」


どうして名前、なんて考える脳味噌はなかった。
突かれる度に圧し潰されそうになってる喉の奥、搾り出すように俺は「司」と口を開く。


「っ、司、っあ、つかさぁ…ッ」


無我夢中、とはまさにこのことだろうか。
もうなにがなんなのかわからなくて、頭の片隅ではわからなくていいと思っている自分がいて、このまま司の熱に当てられてどろどろに溶けてしまえたらどれだけよかっただろうか。そう思えるくらい、俺も大分キていたようだ。


「……ッ」


腰を掴んでいた司の指先が皮膚にめり込む。
繋がったそこからやつの鼓動を確かに感じたその時だった。


「んんぅッ」


中で司のものが反応したかと思った矢先、最奥で吐き出される精液の熱にぶるりと下半身が震える。
逃げないよう、しっかりと根本まで入った状態で固定してくる司に頭を掴まれ、洗面台に押し付けられた。
逃げる気力があるように見えるのか、思いながらも注ぎ込まれる粘っこいその熱に腹の中はどんどん満たされていく。


「っ、ぁっ、ふ、ぁあ…っ!」

「…ッは、」


息を吐く司。
長かった射精も途切れ、腹の中から受け止め切れなかった精液が溢れるのを感じながらも俺は確かに満腹感を覚えていた。
ともかく、身体の中の性器が先程よりかも小さくなったのを感じ、ああ、漸く終わったのか、と安堵した矢先だった。


「っ、ちょ、ま、待って、え」


射精が終わったはずなのに、おかしい。萎んだそこからまた熱が溢れ出している。
しかも、さっきよりも、量がおかしい。
どんどんと腹の中注がれるそれがなんなのか、気付いたところでもう遅い。
上から押さえ付けられた身体はまともに動くことが出来なくて。


「っ、やめ、出てる、うそ、出てる…ッ中に…ッ」

「…原田さん…、全部、受け止めて…っ」


「俺の、全部」と、息を吐く司が確信犯だということに気が付いたところでどうする術もない。
物理的にかよと突っ込もうとするこの間も注がれるそれが勿論受け止められるわけがないだろうが巫山戯んな常識的に考えろ。


「っぁああああ…っ!!」


ケツを濡らし腿から垂れていく熱い液体。
腹の奥並々と注がれるあれこれに、男子便所内にはなんとも情けない俺の声が響き渡る。



mokuji
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