笹山vs四川×原田で脱衣格ゲー@ 『だあああっ!クソが!』 「っ?!」 昼下がりの店内。 たまたま休憩室の前を通り掛かった時だった。 四川の怒鳴り声が聞こえ、咄嗟に俺は休憩室に飛び込んだ。 「お、おい、どうかしたのか?!」 まさか喧嘩か? そう扉を開けば、そこには笹山と四川がテレビの前、ソファーに腰を下ろしていた。 「ほら、阿奈が煩いから原田さんびっくりしてるじゃん」 「うるせえっ!さっきからネチネチ嫌な技ばっか掛けやがって!陰険ヲタクロン毛野郎!」 「い、陰険って…」 てっきり殴り合いになっているのかと思いきや、二人は掴みかかってる様子もない。 その代わり、その手にはコントローラーが握られている。 そして画面にはWinとloseという文字。 「…ゲームか?」 「ああ、そうなんですよ。阿奈、自分が負けてばっかりだからって逆ギレしてきて…すみません、驚かせましたね」 「はあ?!俺が負けてんじゃねえよ、てめえが無茶苦茶なんだろっ!」 どうやら対戦格闘ゲームで遊んでいたようだ。 それにしても四川はともかく笹山がこういうものが好きだとはなんだか意外だ。 「笹山、お前こういうのも出来んのか?」 「いえ、普段はしないんですが阿奈に付き合わされてるとコマンド覚えてしまって…」 「すげえな!翔太みてえ!」 「あ、あんまり嬉しくないですそれは…」 どんまい翔太。 「なーにが付き合わされてだ。家に帰って練習しまくってんだろどうせ!」 「そんな言い掛かり…阿奈じゃあるまいし」 「ああっ?!」 とまあ、再び始まる二人の言い合い。というよりも四川が突っ掛かっているようにしか聞こえない。 これだから四川は。 やれやれとやつに目を向けた時だ、不意に目があった。 そして、四川はニヤリと笑う。 何故だろうか、とてつもなく嫌な予感がする。 そして俺の嫌な予感はよく当たる。 「おい笹山、もう1回だ!もう1回俺と勝負しろ」 「はあ?また?…そろそろ戻らないと店長に怒られるよ」 「知るかよ、ほっとけ」 「またそんな…。別にいいけど、これ以上はタダで付き合うつもりはないから」 「おう、いいぜ。俺が負けたらなんか奢ってやるよ」 突然何を言い出すのかと思えば、先程の悔しがっていた四川はどこに行ったのか。挑発的な態度を取る四川に笹山も驚いたようだ。 「へえ?」と僅かに目を開く笹山に、四川は笑う。 そして、ずびしと俺を指差した。 「その代わり、お前が1回負ける度に原田、てめえ一枚ずつ脱げよ」 「「はっ?!」」 何を言い出すのかと思えば、予想だにしてなかったその要求に俺と笹山は声を上げる。 「おい、原田さんは関係ないだろっ」 「別にお強い笹山様は連勝すりゃいいだろ?それともなんだ、自信ねえのか?」 「……っ」 口籠る笹山に、ふふんと四川は得意げに笑う。 それが無性に腹が立った。 だからだろう、気付いたら俺の口は勝手に動いてしまっていたのだ。 「てめえ、人を出汁に使って笹山負かそうとしても無駄だからなっ!お前みたいなズル野郎に笹山が負けるわけねえだろ!」 「おい笹山、こいつは良いってよ」 ここまで言ってしまえばもう後に下がることは出来なくて。 どちらにせよ、四川に一矢報いなければ気が済まない。 「笹山、こいつにたっかい飯奢らせろ!」 そう、笹山に向き直れば唖然としていた笹山は「原田さん」と俺の名前を呼ぶ。 そして、諦めたようだ。 口元を引き締めた笹山は四川を真っ直ぐに見た。 「阿奈、お前負けたら俺と原田さんの分持てよ」 今まで負け続きだというのにどういうことだろうか。真剣な笹山に狼狽えるどころか四川は「わかってるっつの」とニヤニヤ笑うばかりで。 それでも笹山が負けるはずがない。 一抹の不安を拭えないまま、俺は笹山の応援に徹することにした。 |