証拠隠滅は早急に 「ちょ…ちょっと待てよ、違うから、どうしてそうなるんだよ、誤解だってば!」 このままではとんだ面食い尻軽野郎になってしまう。 なんとかそれだけは避けたくて、慌てて否定する。 けれど。 「じゃあ、付き合ってるってのも嘘なのか?」 「い、いや…それはそうだけど…」 やはり誰かを騙すというのは息苦しい。 しどろもどろと肯定すれば、僅かに和らいでいた司の目が鋭くなってしまって。 「…………」 「あの、司………って、お、おい!」 咄嗟に、伸びてきた手が後頭部に回される。 驚きのあまり転びそうになったところを司の腕に支えられ、そのまま唇ごと塞がれた。 「んっ、んんんーっ!」 なぜそうなる! ツッコミたかったが、ビックリしたのと司の無表情が怖いのとで上手く動けなくて。 されるがまま、這わされた舌に唇を舐め回される。 先程の熱がまだ残っていたようで、強引なキスに収まりかけていた体の火照りが蘇ってきた。 「っ、ちょ、つか…っ、んぅ…っ!」 完全に誤解されている。 それだけは理解できて、とにかく誤解を解こうと必死に司の胸を叩くがビクともしない。 それどころか、後ろ髪に指を絡められ、更に深く唇を重ねられて。 「っ、ぅ、む…ぅう…っ」 司の体重を支えきれず、よろよろと後ずされば洗面台にケツが当たる。 唇の割れ目をなぞられ、そのこそばゆさに堪らず唇を開けばその僅かな隙間から舌を捩じ込まれた。 「っ、は、ぅ…んん…ッ!」 「…原田、さん」 真っ直ぐにこちらを覗き込んでくる黒い瞳がただただ羞恥を煽ってくる。 歯列をなぞられ、歯の裏側、上顎と咥内を司の舌で舐め回されれば感じたことのない感覚にお腹の奥がぞくぞくしてきて、開きっぱなしになった唇から唾液が止まらない。 「んっ、……」 音を立て、唾液ごと吸われれば恥ずかしさのあまりなんだかもう俺は星になりたい。 上手く息が出来なくて、器官まで犯されそうな気配すらあって、なんかもう司が怖くて、どうすることも出来ず司の服を掴んで震えを堪える。 こちらを見ていた司の目が僅かに細められたと思った矢先、ちゅぽんと濡れた音を立て舌を引き抜かれた。 「…原田さん」 「つ、司ぁ……」 だから、誤解なんだってば。そう言いたいのに、まだ口の中がぞわぞわして上手く喋れなくて、なんだかもう上手く言葉に出来ないもどかしさでぐずり掛けたとき。 少しだけ、困惑したような司だったが、それもほんの一瞬のことで。 俺の首元に目を向けた司の目付きが一瞬にして危ないことになっていることに気付いた俺は、そこでようやく先程紀平さんに注意されたことを思い出す。 やべぇ、キスマ隠すの忘れてた。 |