連鎖反応(物理)

「ま…まじで付き合ってんのかよ……」


呆れたような、そんな四川の問い掛けに無言で頷き返す。


「お前……趣味悪すぎじゃね?」


そしてドン引きされた。
言いたいことは分かるがお前が言うなと言い返したい。


「だって、どうして…どこがいいんだよ、あいつの!」

「えっ、どこって……」


しまった、付き合う理由か。そんなものなにも考えてなくて、店長のいいところを探してみる。


「か……顔」


結果、ただの面食い野郎になってしまう俺。


「顔?!なら他にもいるだろ、顔も性格もいいやつが!」


あまりにも突っ掛かってくる四川に、「どこにだよ」と聞き返してみればどうやら四川も四川も何も考えてなかったようで。
「いや、その」と珍しく口籠る四川。


「……お……」

「お?」

「…………………………俺とか」

「…………はあ?」


しまった、あまりにも予想外の四川の反応につい素で返してしまった。
自分で言って恥ずかしかったようで、真っ赤になった四川は「うるせえ!」とこちらを睨み付けてきた。うるせえとはなんだ、まだ二文字しか話してないぞ。


「とっ、とにかく!あいつはやめとけ!」

「んだよ、俺が誰と付き合おうと俺の勝手だろ!店長だってああ見えて優しいんだぞ!」


なにせ元No.ホストだからな!と自分で言ってて虚しくなりつつも、ここで引くわけにもいかない。
四川には悪いが、俺は店長と付き合う…フリをすると決めたのだ。
なのに、四川は。


「勝手に決めんじゃねえよ」


何をそんなにムカついているのか、肩を掴む手に思い切り抱き寄せられた時。
え、おい、ここ店の中。そう、すぐ目の前の四川に目を見開く。


「お前は俺の――」


そう、四川に唇を噛まれそうになった、その次の瞬間だった。
商品棚の最上部。積み上げられていたストックの商品がガラガラガラッと音を立て、四川のすぐ横を落ちていった。

直撃していたらなかなか危ない大きさのその箱たちにぎょっと目を丸くする俺と四川。


「っぶねえ…!」

「お前が騒ぐからだろ…っ!」

「それは…」


それにしても、助かった。
思いながらも、どさくさに紛れて四川から身を離した俺は落ちたそれらを慌てて拾っていく。

それにしても、ちゃんと固定していたはずなのに。
どうして落ちたのだろうか。
疑問に思っていると、物音に驚いた店員や客が集まってきて、取り敢えず適当にフォローしていたのだが四川の野郎いつの間にかにいなくなっていた。後片付け押し付けやがってあの野郎。




「…………」



mokuji
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