お代は結構です 「すみません、俺、俺……っ!」 夢中になってたとはいえ、なんてことをしてしまったのだろうか。 事後。 冷めていく頭の中、俺は店長のスーツを汚す自分から吐出されたブツを見て青褪める。 「別にこれくらい気にしなくてもいい」 「えっ?!いいんですか?!でっ、でも、なんか高そうですけど……」 「恋人がしでかしたことだ。このくらいのこと、可愛い方だろ」 言いながら、スーツを脱ぐ店長。 嘘だ、あの金にがめつい店長が笑って流すなんて。 絶対給引きで脅してくると思っていただけに耳を疑わずにはいられなくて。 「ほ、ほんとうに……?」 「ああ。……その代わり、今日は閉店まで付き合ってもらうぞ」 「え」 「ん?クリーニング代払ってくれるのか?」 笑顔で尋ねてくる店長に、慌てて俺は「の、残ります!」と挙手する。 下手に恩を着せてしまい後から脅されるという可能性を考えれば、なにか店長のためにしたかった。 「なら、掃除の方は頼むぞ」 「はいっ」 「それと…」 「?」 「いや、なんでもない」 そう言って、店長に首筋を触られる。 何事かと店長を見るが、店長は笑うばかりで。 結局、店長と一旦別れた俺は取り敢えず乾いた喉を潤すために休憩室へ向かった。 |