地下室の罠



地下にあるこの店はもちろん、事務室には外部からの光は入らない。
ということはだ、電気を消したらまともに見える訳がなくて。


「ッ、ぁ、ちょっ、店長、待って下さい…ッ、待って下さいっ!」


薄暗い事務室の中。
服の中、入り込んできた手に直接体を弄られる。
店長の手には違いないのだろうけど、如何せん相手の表情がわからなくて。
それどころか、薄ぼんやりとでしか相手の居場所を感じることができないため、動きが予想できなくて。

ああ、なるほど、と思った。


「いつまで俺を待たせれば気が済むんだ、お前は」


店長の息を側で感じ、顔を上げた時、ぬるりとした熱い舌に耳朶を舐め上げられる。


「ぃ……っ、ぁ、ちょ……ッ」


凹凸をなぞるその舌先の艶めかしい動きに、直接吹き掛かる吐息に、全神経が耳に集中する。
明るい時以上に過敏になった神経にその熱は刺激が強すぎて、すぐ側から聞こえる湿った水音に顔が、全身が、熱くなる。


「っ、やっぱり、電気……ッ」


視覚が効かなくなったというだけなのに、ここまで変わるとは思わなくて。
見えないという不安感に加え、他の感覚の鋭利化で既に心臓は煩くなってて。

このままでは心臓が保たない。
そう判断した俺は恥を忍んで店長に頼もうとした。
しかし、
 

「断る」


断られた。

mokuji
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