お願い 俺の緊張を解く。 店長はそう言った。 そう言ったはずなのに。 「な、に…してんすか……ッ!」 「なにって、わざわざこの俺に言わせる気か?お前もなかなかあれだな」 にやにやと笑う店長。 腰に回された骨っぽいその手は背筋をなぞるように裾を捲くり上げてきて。 必死になって服を下げようとするけど、拍子に服のなかに潜り込んでしまった店長の手に「ひぃ」っと声が震えた。 「……て、店長、店長っ」 「なんだ」 「やっぱり、その、俺…っ」 やめます、と言いかけて、凹んだ笹山の顔が脳裏をちらつく。 そうだ、ここで引いてはなにもならない。 でも、これは、キツイし心臓に悪いしそもそももう少し段階踏んで慣れていくのが通常ではないのか。 でも、でも、と一人悩んだ末、俺は服の裾を掴む手を離す。 「あの……店長」 「どうした、往生際の悪い原田」 やめてくれそんな情けない二つ名。 否定できないだけに居た堪れなくなりながらも俺は「電気を」と小さく唇を動かした。 「せめて電気を、消して下さい……っ」 足りない脳味噌を必死に働かせた結果、出た妥協を口にすれば店長は目を丸くして。 「暗い方が辛いと思うが、……まあいい。お望み通りにしてやる」 感謝しろとでも言わんばかりの態度だが、条件を飲んでくれた店長にホッとした。 まあ、すぐに店長の言葉の意味を理解することになるわけだが。 |