精神的拷問 というわけで、店長と別れた俺は店内へと戻ったわけだけど……。 「あ、原田さん!」 「っ!」 戻るや否やまさかの笹山本人と鉢合わせになってしまう。 なにやら可愛らしいラッピングが施されたそれを抱えた笹山は笑顔で駆け寄ってきて。 「見て下さい、これ、今お客さんから頂いたんです。なかなか手に入らない人気店のクッキーなんだそうですが、どうですか?よろしければ一緒に」 よほど嬉しかったのか目を輝かせる笹山につられて頬が緩む。 が、先ほどの脅迫めいた手紙を思い出し慌てて俺は首を振った。 「いや、俺はいいわ。お前が貰ったんだからちゃんと食べろよ」 なるべく言い方に気をつけたが、笹山はみるみるうちに元気がなくなっていって。 「……そう、ですよね。すみません、俺、一人で舞い上がっちゃって」 「美味しそうだったので、ご一緒にと思ったんですが…」と項垂れ、寂しそうにする笹山に俺の罪悪感がチクチクと刺激される。 本当は今すぐ一緒にクッキー食いたいけど、そんなことしたら笹山の熱狂的ファンに殺される。 「わり、じゃあ、俺、行くから」 寸でのところでぐっと堪え、これ以上一緒にいたら俺のメンタルに来す。そう判断し、そそくさと笹山の前から立ち去った。 |