飼い主属性×2

そんなこんなで揉めていると、更衣室の扉が開く。
やってきたのは紀平さんだった。


「お、集まってんねー」

「紀平さん」

「丁度よかった、透は…いないね」

「笹山?笹山がどうしたんですか?」


どことなく様子がおかしい紀平さんに尋ねれば、少しだけ困ったように笑う。


「ん……いや、ちょっとね」


珍しく歯切れが悪い紀平さん。
何かあったのだろうか、と深く聞こうか迷っていると「あ、そうだ」と紀平さんは俺を見た。


「ところでかなたん、聞きたいことがあるんだけど…ちょっといいかな」

「えっ?」


てっきり笹山を探しているものばかりと思っていただけに、ついでとはいえ名前を呼ばれてしまえば身構えてしまうわけで。


「またなんか失敗したんだろ」

「お前と一緒にすんじゃねえよ」


ぽそりと言い返したつもりがしっかり四川の耳に届いていたようで。
「なんだと?」と睨んでくる四川から慌てて視線を逸らす。こういう時は無駄に耳聡いんだよな。


「はいはい、四川も構ってもらいたいんならあとでね」

「構…ッ!ちげーから、余計なこと言わないでください!」

「どうどう」

「お前もうるせえ!」


あいつが司に宥められている隙に四川から避難する俺。
流石二人とも、四川の扱いには慣れているようだ。また噛み付かれる前に場所を移動しようとしたとき、紀平さんと目があった。


「じゃ、移動しようか」


そう言ってちょいちょいと扉を指差す紀平さん。
やっぱり二人きりになるのは緊張するが、断る理由もないので俺は頷き返す。



mokuji
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