チャイナ娘♂の災難I

「っ、な、なに言って…」


四川の言葉が理解できなくて、というかしたくなくて、唖然とする俺。
四川の舌から取れというのだろう、鍵を。それは理解できたけど、腕が使えない今使えるものは限られていて。
空いている方の腕を伸ばそうとした矢先、奴に掴み上げられた。


「…舌で取れって言ってんだよ。わかるだろ?」

「なんでそんなことしなきゃいけねえんだよ…っ」

「はあ?このまま手錠に繋がれてぇのかよ」


それもいいけどな、と喉を鳴らして笑った四川。
全然よくない。どこにいい要素があるんだ。
だけど、四川のことだ。まじでこのままにしてさっさと帰りそうな気配すらある。


「くそ……っ」

別にキスをするわけではない。鍵を取るのだ。そう、取るだけなのだ。そこにやましいあれもロマンス的なあれも存在しない。
自分に言い聞かせるように頭の中で繰り返す。
よし!と自分に喝を入れ、俺は四川を睨む。
そして薄目で唇を寄せようとするが…あれ、届かない。


「って、背伸びしてんじゃねーよ!!」


そして爆笑してんじゃねえ!
笑いを堪えて肩を揺らす四川に顔から火が吹きそうになる。
また誂われたのか!


「馬鹿。そこは普通舌使うだろ」


そして、一頻り笑った四川の言葉につられ、躊躇いながらも俺は舌を出す。
やばい、恥ずかしい。なにしてんだ俺は。
犬かなにかみたいに舌を突き出す格好になったはいいが、やつの視線が苦痛で。諸々から目を逸らすため、ぎゆっと目を瞑ったとき。
舌先に、ぬるりとしたものが触れた。


「っ、ん」


一瞬怖気づいて逃げ腰になったとき、後頭部に回された手に引き寄せられ、深く、舌を絡め取られる。
次の瞬間、足元の方でチャリンとちいさな金属音が響いた。

……ん?金属音?…………金属音?!?!
あれ、もしかして鍵落ちてませんか。舌に全くそれらしき感触がないんですが落ちてませんか…!!
慌てて中断させようとやつの胸を叩くけど、一向に離れない。
それどころか、絡み付いてくる舌は咥内の付け根まで触れてくる。

mokuji
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