餌付けです 「仙道、お前、こいつらのこと調べてんのか?」 不意に、真面目な顔をしたユッキーがこちらを見てくる。 探るような視線にどきりと全身が緊張し、つい目が泳いでしまう。 「調べるってか、ちょこーっと気になったから見てただけで…純たちには言っちゃダメだよ」 純は、俺がまだ引きずってんじゃないのかと心配してくれている。 事実その通りなのだが、それがバレてしまえば純のヒズミに対する復讐心を炊きつけてしまうのではないか。そのことが、心配だった。 俺は、ヒズミを敵に回したくない。 それ以上に、関わりたくない。 もし純がヒズミと対立したと思ったら、またあの時と同じことが繰り返されると思ったら、ゾッとする。 そんな俺の思いを汲み取ってくれたのだろう。 ユッキーはこわばらせていた頬を緩め、「わかってる」と微笑んだ。 「でも、あんまり一人で背負い込むなよ。なにかあったらすぐに俺たちを頼ってくれていいんだからな」 「分かったってばー、もう、…ユッキー、俺のことガキ扱いし過ぎ」 「似たようなもんだろ」 「ユッキーのバカ」 「拗ねんなって、ほら、ガムやるから」 ヘラヘラと笑いながらユッキーは制服から取り出した板ガムを俺の目の前に差し出してくる。 色んなフルーツが混ざったカラフルなパッケージ。 なんだか餌付けされてるみたいで面白くなかったけど、出されたものは貰う主義だ。 「…むー」と唸りながらそれを受け取れば、「そこは貰うんだな」とユッキーは笑った。 |