甘やかしたい人

「バタバタして、悪かった。もう大丈夫だ」

「マコちゃんの大丈夫は、アテにならないからな〜」

「…」

「えへへ、嘘だってば」


ちーちゃんがいなくなって、再び締め切ったベッドルームにて。
怖い顔するマコちゃんに笑いかければ、少しだけ視線を泳がせたマコちゃんはごほんと態とらしく咳払いをする。
そして、じろりと俺を見た。


「お前も、何かあったときはすぐに声を上げろ。いいな?」

「声って、俺もー子供じゃないんだからさぁ、心配し過ぎだって」

「心配するのは当たり前だろ。危なっかしいんだよ、お前は。特に」


そうなのだろうか。
自分では、よくわからない。
けど、あまりマコちゃんの怒った顔を見たくない。
心配も、させたくない。
だから、なるべく頑張っているのだけど、その結果余計マコちゃんをハラハラさせてしまっているのかもしれない。


「京の身に何かあったって聞いて、心臓が止まったんだからな」

「ごめんね、マコちゃん」


ぷりぷりと怒るマコちゃんの頭を撫でれば、マコちゃんはなんか言いたさそうな顔をして俺を見るが、結局何も言わずに俺の手を受け入れる。
耳が赤い。
可愛い。


「でも、ちーちゃんのことはホント、気にしなくていいから」

「いい噂は聞かない」

「俺だって、いい噂流れてないでしょ」


そう言い返せば、マコちゃんは押し黙った。
学園内の風紀秩序に関わる噂や不満などは全て風紀室に持ち込まれていることはわかっている。
適当に言ってみたのだが、やはり俺に関するあれこれも持ち込まれているみたいだ。
気にはなったが、否定もしないマコちゃんの様子からしてその内容は伺えた。


「考え過ぎだってば。そのうちハゲるよー?」


艶々した前髪を撫で付け、笑いかければ、レンズの下のマコちゃんの目が俺を見る。
誰のせいだと言いたいのだろう。
小さく笑って、俺はマコちゃんから手を離す。

「ありがとね、マコちゃん」

mokuji
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