パトロール隊の職務

ヒズミから逃げ切ることができたのに、胸のざわつきは収まらない。
立ち止まってしまえばあいつが現れそうで、足を止めることは出来なかった。

神経が過敏になる。
周りの全てが敵に思えてきて、まるであの頃に戻ったかのような感覚に陥った。
大分、俺は追い込まれているらしい。
理解したくはなかったけど。
ここ最近、ようやく平和になってたのに。


きゃいきゃいとはしゃぐ参加者に紛れてパトロールという名のヒズミから逃亡をしている時だった。


「あの、」


背後から声をかけられる。
震えた声。
何気なく振り返れば、そこには気が弱そうな男子生徒がいた。


「…なぁに?」

「僕の友達が、その、転んじゃって、歩けなくて、その」


何に怯えているのか、そうしどろもどろと言葉を紡ぐ男子生徒は今にも泣き出しそうで。
どうやら、パトロール隊の俺に対して用があるらしい。


「んー、そっかぁ。大変そうだねぇ。で?その怪我した子、どこにいるの?」

「あの、あっちにある……」


男子生徒から、その助けを求めている生徒の居場所を聞き出した俺はすぐに向かうことにした。
本当は、こっちが助けてもらいたいところだがそれはそれだ。
無視するわけにもいかない。

怪我した生徒がいるという教室の前。
辺りには人気はない。
あまりの静けさに本当にここに人がいるのだろうかと疑ったが、あくまでも今は鬼ごっこの最中だ。
隠れているのかもしれない。
そう、自己完結した俺は勢いよく扉を開いた。

そこには誰もいなかった。

mokuji
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