ミッション成功?

人気のない校舎。
聞こえてくるのは、最も聞きたくなかった声で。

なんで、ヒズミがここに。
そんな疑問を抱くよりも先に、俺は駆け出していた。

逃げるという行為を今更恥ずかしく思いはしない。
だって、俺はずっと逃げてきたのだから。


「あ、ちょ、おい!待てよ!キョウ!なんで逃げんだよ!?」


慌てたような歪の声が遠くなる。
ただ我武者羅に俺は駆けていた。
しかし、離れたと思いきや近づいてくる足音に全身からどっと汗が吹き出す。


「あは、わかった。鬼ごっこだろ?鬼ごっこがしたいんだろ?最初から素直にそういえばいいのに。ほら、さっさともっと走れよ!そんなんじゃすぐに捕まっちゃうぞ!」


廊下に響くはヒズミの笑い声。
わざとだろう。ぴったりと歩幅を合わせ、距離を詰めることも離すこともせずくっついて走る
ヒズミに俺は気が気でなくなる。
それでも、足を止めることだけはできなかった。

あいつにだけは、捕まってたまるか。

セットした髪が崩れようが、気に止める余裕すらなかった。
とにかく、ヒズミを撒くことだけが精一杯で、俺は広い校舎の中をただ駆け回った。

そして、気がついたときには周りは鬼ごっこに参加中の生徒で溢れ返っていた。
どうやら、二人きりという最悪の状況はまぬがれたようだ。
あいつがここにいるという時点で、最悪には変わりないのだろうが。


mokuji
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