事の発端

メインイベント鬼ごっこ、開始直前。
鬼は東校舎、逃げる役は西校舎へと移動し、開始の合図によってそれぞれ動き出す。
そして、出席番号奇数の俺も他の生徒たちにまぎれて東校舎へと向かおうとした時だった。


「おい、会計」


玉城由良に呼び止められる。
渋々足を止めれば、何かを手にしたそいつは歩み寄ってきた。


「まさか、お前も遊ぶつもりじゃねえだろうな」

「遊ぶっつーか…役員も参加っつってたじゃん」

「お前は例外だ」


そう笑う玉城由良は言いながら何かを押し付けてきた。
やつを一瞥し、押し付けられたそれを受け取ればどうやらそれは腕章のようだった。
そしてその腕章には文字が入っていた。


「……パトロール隊?」

「ああ、お前にはゲーム中の見回りを担当してもらう」

「は?なにそれ」


そんなこと、会議んときは言ってなかったくせに。
あまりにも唐突すぎて、玉城由良を勘ぐらずに入られなかった。


「なんで俺がしなきゃなんねえの」

「そんなにこえー顔すんなよ。別に深い意味はない。ただ、」

「なに」

「日々校内見回って点検している奴に任せたほうがいいだろうって思っただけだ。生徒同士の揉め事を仲裁するのも慣れているみたいだしな」


喉で笑う玉城由良。
一瞬、自分が認められてるということに気づかなかったが、相手が相手だからだろうか。素直にそれを受け止めることはできなかった。
しかし、俺が疑おうと奴にとって些細な問題のようだ。


「じゃあ、頼んだぞ」


言いたいことだけ言って、玉城由良は俺に背中を向け歩き出す。


「おい、ちょっと待っ……」


慌てて呼び止めようとするが、玉城由良が再び俺を見ることはなかった。
ほんと、勝手なやつだな。
玉城由良が去ったあと、小さく舌打ちをした俺は握り締めた腕章に目を向けた。
何を企んでいるんだろうか。
全く理解できなかったが、やつの考えがわからない今下手に勘ぐっても時間の無駄だ。
まぁ、正直面倒だったので合法的に不参加になれるのは良かった。
思いながら、俺は制服の袖に腕章を通す。

そして、現在に至る。

mokuji
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