親衛隊、行動開始。

生徒会会議が終わってから数日。
新入生歓迎会のレクレーションの内容の内容が校内で発表された日のことだった。


「どういうことですか、仙道さん」


まず、俺の元までやってきたのはせっかくのかわいい顔を歪めた純だった。


「どうって、なにがぁ?」

「なにがって、鬼ごっこのやつですよ。ほら、これ。最優秀鬼賞のところ」


そういって純が突き出してきたのは、先程各クラスで配布されたであろう新入生歓迎会についてまとめたプリントだった。
どうやらご丁寧に目を通してくれたようだ。


「どうもこうも、そのまんまだけど」

「仙道さんが景品ってどういうことですか」

「だーかーらー、キスだけだって。一番頑張ってくれた子にちゅーすんの」

「ですから、なんで」

「そういう風になっちゃったんだから仕方ないじゃん。じゅんじゅんってばしつこーい」


生徒会室前廊下。
あまりにも怖い顔するもんだから茶化してやろうと笑ってみるが、純の顔はさらに険しさを増す。


「誰ですか、仙道さんにこんな真似をさせようとしたやつは」


珍しく怖い顔をする純は俺を睨む。
ほんと、かわいい顔が台無し。


「俺だよ、俺。俺が志願したの」

「なんでそのような真似を」

「別にちょっとしたネタでしょー。そんな物騒な考え方やめてよ」


信じられないとでもいうかのようにこちらを見る純。
本当は俺だってやりたくないが、もしマコちゃんの代わりになるためなんていったら純はもっと煩くなるだろう。
知人同士の仲が悪いというのはなかなか不便だ。


「ネタでも、キスですよ。キス。もし気持ちの悪いやつと仙道さんがキスしなきゃいけなくなったらどうするんですか」

「そのときは目を瞑るしー」


「あのですね」と不満そうにする純に俺は「それに」と口を開いた。


「純と思ったらなんとかいけそうだし」


そう笑いかければ、一瞬目を見開いた純はアホみたいな顔をして俺を見つめた。
そして、やつの顔はじわじわと赤くなる。
おお、まじ照れ。


「仙道さんは、いつもそんなことばかりいって」

「あははっ!なに?期待しちゃった?純君かわいーねー」


にやにやしながら顔をひきつらせる純を覗き込めば、純はばつが悪そうに舌打ちをした。
そして、純は笑う。


「心配した俺がバカでしたね。もういいです、どんな醜男が相手になってもしりませんからね」

「はいはい」


どうやらよほど頭に来たようだ。
適当にあしらえば、純はそのままどこかへと歩き出した。
いたらいたらで小言が喧しい純だけど、いま、あまり一人になりたくなかっただけに言い過ぎたかもしれないと弱気になったがその去っていく後ろ姿を呼び止めることはなかった。

俺も、そろそろ行くか。
そう口の中で呟き、今あまり行きたくない学生寮の自室へと向かって俺は歩き出す。






「もしもし、俺だ。今すぐ親衛隊総員集めろ。お前のとこの親衛隊もだ。緊急合同会議。新入生歓迎会のことって言えば内容は解るだろ?至急、学生寮ラウンジに集合しろ」

mokuji
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