脅迫的な

「えー、なにそれ。それってさぁ、かいちょーがやりたいだけなんじゃないの?」


なんで俺がそんなことしなきゃならないんだ。
会長の目が笑ってないだけに、冗談には聞こえなかった。


「別にちょっとしたネタだろ。こーいうのがあった方が盛り上がるだろ」

「だから、なんで俺が」

「そうですよ。仙道だけずるいです」


横から口を挟んでくるちーちゃん。
そこかよ。もっと他にもあるだろ。
色々突っ込みたかったがもう諦めた。


「別に石動が誰とキスしたっていつものことだから面白くねーだろ。会計のが笑える」

「はぁ?」

「まあ、お前が嫌なら仕方ないな。風紀委員長にでも頼むか」


含め笑いが癪に障って会長を睨めば、会長はにやにや笑いながら俺に目を向けてくる。
その口からでた単語に全身が緊張した。


「…あんた」

「風紀委員長って敦賀のこと?無理無理!だってあいつちょーノリ悪いじゃん!」


なにを企んでいるんだ。
そういいかけたとき、机に乗り出した茅は呆れたように大きな声を上げた。


「まあ確かにそうだけどな。あいつなら、お前がやらないなら誰かさんがするはめになるっつったら引き受けるだろ」


誰かさん、というところで会長の目が俺を捉えた。
つられるようにして庶務の視線がこちらに向けられる。
人前だとわかっていたが、からかうような会長のその挑発的な態度に腸が煮え繰り返しそうになり、自分がどんな顔をしてるかどうか知る余裕すらなかった。

テーブルの上。
会議が始まる前に庶務の二人が注いでくれたグラスのジュースを喉に流し込んだ俺は空になったそれをテーブルの上に置いた。
特に意識的にしたわけではないが思ったよりも大きな音が出てしまう。
役員たちの視線が集まるなか、構わず俺は口を開いた。


「いいよ、キスしたらいいんでしょ。わざわざ風紀に頭下げなくてもそれくらい俺がする」


その代わり、キスだけだから。
唇を濡らす甘味料を舌で舐めとり微笑み返せば、会長は笑い返してきた。


「まあ、お前に期待してねえけどいったことくらい実行しろよ」


ああ、ほんと、この男の無駄に整った顔を跡形もなく叩き潰してやりたい。

mokuji
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