フラッシュバック

風紀委員に呼ばれたマコちゃんと別れ、再度一人になった俺は歩き出す。
とにかく、居ても立ってもいられなかったのだ。

生徒会室にいたヒズミと会長。
二人はなにを話していたのだろうか。
そして、ヒズミはなんでこの学園に来たんだ。

『会いたかったよ』

脳裏に蘇る軽薄で突き抜けたように明るい声に吐き気を覚えた。
全身から汗が滲み、肩が震え出す。


「……っ」


狂ったような笑い声。

全身を這う骨っぽい手の感触。

昼も夜もわからない暗闇。

破裂するような激痛。

忘れたくて頭の奥に押し込んでいた映像が次々と瞼裏に浮かび上がり、全身が緊張した。


「は、ぁ…ッ」


ズキズキと疼き出す手首の傷を掴み、指先で傷口を引っ掻く。
しかし、うぞうぞと傷口の中で蠢く嫌な感触は取れず。
フラッシュバックに軽く目が眩んで、足の力が抜けそうになった。
咄嗟に壁に凭れ、体勢を保つ。

なんでヒズミはあんな変装までして。
俺に会いたかった?なんで。なんのために。
まさかまた、まだ、足りなくて。
逃げた俺が気にくわなかったから?
どうしよう。
どうしたらいい。

思考回路が乱れだし、軽いパニックに陥りかけたときだった。

不意に、肩を掴まれる。


「っ!!」


緊張した全身がびくっと跳ね上がり、青い顔のまま振り返ればそこには。


「……大丈夫?」


無造作な黒髪。
相変わらず表情のないそいつは俺と目が合うなりやっぱり高揚のない声で尋ねてくる。

生徒会書記、各務陽平。
図書館の帰りなのか、数冊の本を抱えた各務の姿に俺はほっと安堵する。

mokuji
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