仲介 「……っ、……」 ご丁寧に届けて下さいましてありがとうございます、なんて言えるわけがない。 なんでもないような顔をして目の前に立つユッキーに指先から冷たくなっていくのを感じた。 「ほら、お前のだろ」 強引に手渡されそうになり、咄嗟に手を振り払う。 カツンと音を立てて落ちる端末。 なっちゃんも、純も、驚いたような顔をしてこちらを見ていた。 ――ただ一人、ユッキーを除いて。 「……まだ本調子じゃないんだろ」 端末を拾い上げたユッキーは、俺ではなくそれを純に渡した。 何故自分が、と驚いたような顔をする純になにも答えるわけでもなく、「確かに届けたからな」とだけ口にしてユッキーはそのまま立ち去ろうとする。 「あ、おい雪崎……ッ!……なんだよあいつ」 「…………」 「仙道さん、これ」 そう、純は携帯を渡してくれた。 ヒビは入っていないようだが、素直に受け取りたくもない。 どうしても昨夜のことが蘇り、躊躇ってしまいそうになるがこのまま受け取らないでいるのも不審に思われるだろう。 「……ん、どーも」 そう、携帯端末を受け取る。ほんのりと温かいのが嫌で、俺はそのまますぐにポケットに突っ込んだ。 「……あの、仙道さん……」 「……悪いけど、話ならまた後ででいーい?」 「え……?」 「……俺は、大丈夫だから」 平常心、平常心。 悟られることが一番嫌だった。純は特に。 「そういうことだ、おい、さっさと自分の教室に戻れ」 なっちゃんにしっしと追い払われ、「なんでお前に指図されなきゃいけないんだ」と不満を隠そうともしない純だったが、噛み付くことはしなかった。 「……また後で、様子見に行くんで。ちゃんとゆっくり休んでてくださいよ」 「……ん」 「それじゃあ、失礼します」 「……おい!お前教室そっちじゃねーだろ!」というなっちゃんの声を無視して歩いていく純。 ……もしかしたらもっとしつこく聞かれるかもしれないと思っていただけに、あっさりと引き下がる純にただ安堵した。 「それじゃ、なっちゃんも……」 「何言ってんだ、今度こそ逃さねえからな」 「……ですよねー」 ……正直、自分でもわからない。けど、純と居るよりもなっちゃんといた方がましだと思えるのはどうしてもユッキーのことを考えてしまうからだろう。 なっちゃんに連れられ、そのまま部屋へと戻ることになる。 |