マコ京でいい夫婦ネタ

真言×京/いい夫婦ネタ/ほのぼの

「いい夫婦ねぇ…」


テレビの中、組まれてる特集をぼんやりと眺める。
11月22日、だからいい夫婦の日。
夫婦と言われても、仲の悪かった父親と母親のイメージが強すぎて仲の良い夫婦が想像出来ない。


「仙道、お前まだ寝ないのいのか?消灯時間まで間もない。早く寝るぞ」


うーんと唸ってると、着替えたマコちゃんにソファーの背もたれを叩かれる。


「えー?マコちゃんジジィじゃあるまいし早すぎないー?夜はまだまだこれからでしょー」

「そうなこといって朝になって眠い眠い言ってるやつは誰だよ。俺は朝一で会議があるから早めに眠りたいんだよ。テレビ見るのは結構だが音もう少し小さくしろよ」

「むーマコちゃん小姑みたい…」

「誰が小姑だ、誰が。大体お前はこんな夜中にお菓子を食って虫歯になっても知らないぞ」


う、藪蛇とはまさにこのことだろう。
一度始まったマコちゃんの説教は長い、とにかく長いのだ。
俺はそそくさとテーブルの上に散らかしていたお菓子袋を隠す。


「俺が何時に食べてもいいじゃーん。純やユッキーはなんも言わないしぃ?」

「あいつらはお前に甘すぎるんだよ。本当に好きならこの不健康な生活を改善させるようにすべきだと思うが」


ここにはいない純やユッキーにまで説教の被害が及ぶのもいつものことだ。
俺のさり気ない失言のせいでマコちゃんの二人に対する株がだだ下がりなのも仕方ない。
けど、それよりもだ。


「……」

「なんだよその目は」

「マコちゃんって、俺のこと好きなの?」


なんとなく気になって聞き返せば、マコちゃんは露骨に言葉に詰まった。
…わかりやすい。


「…っ、いや、それは、ものの例えだ」

「じゃあ、やっぱり俺のこと嫌いなんだー」

「きっ嫌いとは言ってないだろう!」

「…へーー」

「やめろ、その目!」


じとーっと見てると、顔を真っ赤にしたマコちゃんはバツが悪そうに咳をする。
そして、諦めたように目を逸らした。


「…どうでもいいやつの健康なんて心配する程、俺は暇なやつじゃない」

「ふぅん、なるほどなー。そっかー」

「もういいだろ、俺はもう寝るからな」


あ、怒った。
逃げるように自分のベッドに潜るマコちゃん。
そんなマコちゃんが面白かったが、これ以上弄ってマジギレされても困る。
仕方ない、とテレビを消し、照明を落とした俺もベッドに入ることにした。

 
「おい、京…」

「んー?なに?」

「なんで俺のベッドに入ってくるんだ」

「マコちゃんがさっさと寝ろって言うから?」

「……なら、自分のベッドで寝たらどうだ」
 
「いいじゃーん、一緒のが暖かいし。…えへへ」


聞こえてくる溜息。聞こえてくるのはマコちゃんの溜息。もっと可愛げのある反応ができないのかと思ったが、「後から文句言っても知らないからな」というマコちゃんの声が微妙に裏返ってて面白いのでよしとする。
小姑みたいに細かくてうるせーマコちゃんだけど、こういう時、何も言わずに俺を傍に置いてくれるマコちゃんが好きだった。
本人に言ったらすごい恥ずかしがるので言わないが、代わりに「ありがとう」とだけ伝えておいた。


翌日。


「京、いつまで寝てるんだ!もう七時だぞ!」

「う、うるさいぃ…あと二時間あんじゃん…」

「馬鹿かお前、それじゃ遅刻するだろ!ほら、起きろ!さっさと顔洗って着替えろ!」


布団を剥ぎ取られる勢いで俺までベッドから落ちてしまう。
起き上がるにも目が覚めず、床の上でぐずる俺に構わずにマコちゃんはカーテンを開いた。
瞬間、視界いっぱいに広がる日の光に目の前が眩む。


「うええ…」

「文句は言わせないと言っただろう。ほら、しゃきっとしろ!しゃきっと!」

「ううー…眩しい……」


マコちゃんは小姑とというより、お母さんだなぁ。
思いながらも二度寝を強制的に阻止された俺は諦めて準備をすることにした。


* * * *


【おまけ:敦賀真言視点】


六時半。予め用意していたアラーム音で起床。
京のやつがベッドに潜り込んだせいで眠れるか心配だったが、案の定ろくに眠れなかった。
これではダメだ、とにかく顔を洗って気持ちを入れ替えればならない。
そう、気合を入れ直していたとき。


「……んん、むにゃ……」


背中に擦り寄ってくる京に全身が緊張する。
本当、人の気も知らずに。
振り返れば、涎垂らして爆睡してる京がいた。
あまりにも気持ち良さそうに眠ってるものだから全身脱力に襲われそうになる。


「……」


仕返しの代わりに、その額にそっとキスをする。
少しだけぴくりと反応した京だったが、すぐに心地良さそうな寝息が聞こえてきた。
そんな京につられて俺は目を瞑る。

そして、数十分後。


「な、なんということだ……」


気がついた時には時計の針は大きく進んでいた。
まさかこの俺が二度寝するなんて。
大事な会議があるのにまだ着替えてすらいないなんて。
風呂に入って準備して、まともに朝食を取っていたら確実に間に合わない。


「京、起きろ!京!いつまで寝てるんだ!」


こいつは危険だ。俺まで調子狂わされてしまう。
とにかく三度寝だけは阻止しなければならない。
俺は京が包まっていた布団を剥ぎ取った。


end

mokuji
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