擦れ違う心と噛み合わない体

「今のは……違………っ」


マコちゃんを拒否したわけじゃない。
そう言いたいのに、言葉が上手く出なくて。

少しだけ驚いた顔をしたマコちゃんは、俺から手を離した。
そして、微笑む。


「……悪かった、無遠慮だったな」


傷付いた、顔。
そのくせ俺を気遣う優しい声。

胸が、心臓が痛いほど軋む。

違う、違うのに。
真っ白になった頭では上手く言葉を吐き出せない。


「ま、こちゃ……」


「委員長」


辛うじて出した声はどこからともなく響いてきた不遜な声に掻き消される。

ハッとし、振り返ればそこにはなっちゃんがいた。


「委員長、そろそろ人目が多くなります。……戻らないと見つかったらメンドーっすよ」

「…………あぁ、そうだな。千夏、京を頼んだ」

「っ、待って、マコちゃんっ」


マコちゃんが帰ってしまう。
咄嗟にマコちゃんの腕を掴んで引き止めれば、振り返ったマコちゃんにくしゃくしゃと髪を撫でられた。


「……京、お前の顔が見れてよかった。……またな」

「…………ッ!」


マコちゃんの手はすぐに離れた。
今度は止める暇もなく、マコちゃんが離れていく。

慌てて追いかけようとするが、なっちゃんに止められた。


「…………なっちゃん……っ」

「あんた、生徒会なら委員長の状況知ってんだろ。……あんま長居すると見つかった時が厄介なんだよ。…どーせいつもベタベタしてんだから少しくらい我慢しろ」


なっちゃんの言い分は理解できた。
できたからこそ余計、歯痒かった。

あのときのショック受けたようなマコちゃんの表情が頭から離れない。

……マコちゃん。
後から電話しよう。
そう思うのに、上手く弁明できる自信がなかった。

一瞬でもマコちゃんを怖いと思ってしまった自分が嫌で嫌で嫌で、俺は、やり場のない自己嫌悪にただマコちゃんを見送ることすらできなかった。

mokuji
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