運命の再会

ちーちゃんこと石動千春の親衛隊が暴走したのは今日が初めてではない。
ちーちゃんの顔の怪我を見た親衛隊たちは卒倒し、一部始終を見ていた親衛隊の発言により日桷和馬は彼らのブラックリスト上位に上がった。
それからはもう、目が回るような忙しさで事態は悪化する。
なんとかして日桷和馬を陥れようとあの手この手試行錯誤する彼らは毎回毎回日桷和馬に返り討ちに遭い、学園内のあちこちで自業自得の悲鳴が上がり俺たち生徒会や風紀、保健委員は目まぐるしく動き回った。
一番走り回っているであろうマコちゃんなんてここ数日でばんばん痩せてきてる。
ほどよい筋肉質な体だったのにこのままマコちゃんをガリガリにして堪るかということで俺も校内の見回りに積極的に参加するようしたのだが、やはり疲れる。

ここはやっぱり元凶の日桷和馬を捕まえた方が早そうだなあ。


学園内、生徒会室前。
ちーちゃん親衛隊たちを保健室まで届けた俺は凝った肩を回して鳴らしながら生徒会室の扉を開く。
そして、固まった。

まず目に入ったのはあの特徴的な黒のもじゃもじゃ頭の後ろ姿で、その更に奥には赤茶髪のいかにも不良ってやつ、もというちの会長様がいるではないか。
二人はなにやら揉めていたらしく、もじゃもじゃ転校生君の肩を掴み会長は迫っていて。


「ありゃ、お邪魔でしたかー…」


つーか、まさかこんなところであっさり日桷和馬と会えるなんて思わなかったから心の準備できてねえってかなんで会長と一緒にいんの。まさかお前もちーちゃんと同じ口か。


「てめえ、勝手に入ってくんじゃねえよ。出ていけ」


うんうんごめんねー。
でも一応俺ここの会計だから。

しかしせっかく出会えたのだからわざわざ逃がすのも勿体ない。


「ちょうどよかったー。君さ、日桷君だよねえ?ちょっと聞きたいことあるんだけどいいかな?」


吠える会長を無視して日桷和馬の前にたった俺は営業スマイルで小首を傾げてみせる。
警戒心を解くには頭弱そうなフリをするのが一番いい。
瓶底眼鏡がこちらを見上げた。
なんだかんだ日桷和馬と対面するのははじめてだった。
思ったよりも、いい匂いがする。
香水かな?と思った矢先だった。


「………キョウ?」


俺をみた日桷はそう確かに口にした。

その声に、固有名詞に、心臓が握り潰されたような衝撃が走る。
全身からどっと嫌な汗が滲んだ。


「は……っ?」

「お前、平校のキョウだろ。おれだよ俺、ヒズミ。久し振りだな!お前がここにいるって本当だったんだな!いやー急にいなくなるからビビっただろ!」


会いたかったよ。
そう、数年ぶりに再会した友人に会ったかのようなテンションで喜ぶ日桷和馬に全身の血の気が引いていくのを感じた。

mokuji
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