条件反射

ちーちゃんがなっちゃんに連絡してから、どれくらい経ったんだろう。
多分、そんなに経ってないと思う。


「来たようですね」


ちーちゃんの声につられて顔を上げれば、確かにそこには中庭が似合わない男が一人。
ただてさえおっかない顔を更に険しくして立っているではないか。


「………どーも」

「………………はぁ」


言いたいことは色々あるけど、言葉にするのもバカバカしいといった顔だ。
怒ってる……のだろう、もう全身から滲み出るその空気からそれは嫌ってほど分かった。


「千夏、後は頼みましたよ」

「…………お前に心配される筋合いねーんだよ」

「まだ反抗期は直らないようですね。…仕方ないですが、僕はこれで失礼します」


「譲」と、側に控えていた譲君に声を掛け、ちーちゃんは優雅にその場を立ち去った。
譲君もそれに倣って後を追いかけて行く。

ということは、つまり、俺となっちゃんの二人きりになるわけだ。

…………絶対、怒ってるよなぁ。
あんだけ勝手に行動するなって言われてたんだし、文句の一つや二つ言われるのは覚悟してた。

けど。


「…………俺たちも行くぞ」

「へ?」

「…いいから来い」


肩を掴まれそうになって、びっくりする。
咄嗟に振り払えばなっちゃんも、俺も、びっくりして顔を合わせた。

触られるのが、怖かった。
それが、なっちゃん相手にまで発揮されるのが自分でも呆れて、笑ってしまいそうだ。


「……逃げんなよ」


なっちゃんは無理に俺を連れて行こうとはしなかった。
そう一言だけ言って、「ついて来い」と歩いていく。

俺は少しだけ迷って、それからその後ろに着いていった。

mokuji
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