可愛いの定義 俺のためだとユッキーは言った。 「っ、ぅ、ん、んんッ」 上を向かされ、深く唇を重ねられる。 今度は相手がユッキーだと分かっているが、それでも得体の知れない相手にされた時よりも遥かにショックが大きくて。 「ゆ…き…っ」 「…仙道」 こんなの、おかしい。 そう思うのに、名前を呼ばれる度に萎縮してしまう。 「仙道、仙道…仙道…っ」 唇、頬から顎先、首筋から胸元へと伝うように這わされる唇の優しい感触が余計恐ろしかった。 とにかく、逃げなければ。そう思うのに、ただでさえ緊張した体を押さえ込まれればろくに動くことすら出来なくて。 「っ、嫌だ、嫌だ、やめろ、やめろってば…っ」 がむしゃらにユッキーの頭を掴み、自分の体から引き離す。 「…っ仙道」 どうしてユッキーが悲しそうな顔をするのだろうか。 泣きたいのは俺の方なのに。 裏切られたようなショックと俺のためだというユッキーへの困惑でただでさえぐちゃぐちゃになった頭は何も考えられなくなってしまう。 そんな風に名前を呼ばれたら、余計。 「…俺とやるのはそんなに嫌か?」 「い、やだ、嫌だよ、ユッキー…っ、俺、ユッキーのこと、嫌いになりたくない…っ」 自分が何を言っているのか分からなかったが、それでも、言葉を選んでる余裕もない俺は思ったことを口にするしかなかった。 「…仙道」 ユッキーの手が、僅かに緩んだような気がした。 こちらを見下ろしていたユッキーの目が、僅かに細められる。 そして、 「お前は本当に可愛いやつだな」 嬉しそうに笑うユッキーに、最早何度目かわからないキスをされた。 |