誰のための 「な、んで…えっ、なに、これ」 一瞬、状況が理解できなかった。 慌てて起き上がろうとすれば、ずり下げられた下着の奥、股倉からどろりとしたものが伝い落ちる。 身に覚えのあるその嫌な粘着質な感触に血の気が引いた。 「……なに、してんの」 呂律も回らない。 指先も動かない。 頭も。 けれど、この状況が明らかに異質なことだけは確かに理解できた。 「ごめん、仙道」 どうして謝るんだ。 凍り付く俺に、ユッキーは髪に触れてくる。 その動作に全身が硬直し、息が詰まりそうになった。 「お前に負担になるようなことはしてないから」 負担って、なに。意味がわからなかった。 目の前の男が俺の知ってるユッキーじゃないみたいで、もしかしたら夢なのかもしれない。 そう思い込みたいのに、五感がこれは現実なのだと知らしめてくる。 「仙道のためなんだよ」 動けなくなる俺に、ユッキーは優しく髪に唇を寄せた。 電流が走ったように、全身が反応する。 次第に覚醒していく意識。 薄暗い部屋の中、ユッキーと確かに目があった。 「全部、お前のためだから」 囁かれるその言葉に、ただでさえこんがらがっていた頭の中が真っ白になるのがわかった。 |