逃走計画

(敦賀真言視点)


京の様子が可笑しい。


『そっかぁ、なら仕方ないよね』

電話口であいつはああ言ったが、そもそもそれ自体がおかしい。
もっと駄々捏ねると思っていたのに。
ただ単にあっさり諦められたことに自分が気にしているだけかもしれない……認めたくはないが。


「…まあいい」


いつも驚かされてるばかりだ。たまにはこちらから驚かしてやろう。
断るのは勇気が必要だったが、それでも、喜ぶ顔が見たい。いや、違うな、俺がただ単に会いたいだけだろう。
それも、わかってる。

建物から出て、その前に駐めてたバイクに跨る。


「真言?」


すると、追い掛けてくる足音とともに名前を呼ぶ声がした。
慌てて出てきたのか、ぺたぺたとサンダルを鳴らす春日に内心舌打ちが出る。
面倒なやつに見つかったと。


「なんだ、お前まだ居たのか」

「僕がどこにいたって僕の家なんだから当り前でしょ。っていうか、真言、どこ行くの?」

「コンビニ」

「わざわざバイクで?」

「ああ」


学校へ向かうなんて言われたら、何を言われるかわからない。
そう適当に流したのだが。


「なら僕も」


始まった。
昔からだ、春日は何をするにも誰かの後ろにくっついてくる癖がついているのだ。
高校になって玉城の方について行くようになったと思えば、これだ。
昔なら仕方ないと思って放っとくのだけれど。


「断る」


エンジンを掛ける。
「え」と驚いたような春日の顔が視界に入った。


「二人乗りはしない主義なんでな」


ただでさえ面倒だというのにわざわざ交通法違反まで重ねたくない。
春日が何かを言ってくる前に、そのまま走らせた。


「真言!」


案の定あいつは何かを叫んでいたが、それもすぐにマフラーの音に掻き消される。

会いたいとか言ってるくせに、これでは逃げてるみたいではないか。
なんて、思わず自嘲せずにはいられない。


mokuji
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