未定 「うん、俺。ごめんねえ?電話出れなくて。携帯落としちゃってさ、今拾ったとこ」 『…そうか、特に何があったというわけではないんだな?』 「うん、何もないよ」 『本当に?』 とにかく、平常を装うとしたのが裏目に出てしまったのかもしれない。鋭いマコちゃんの指摘に一瞬何も考えれなくなってしまう。 「…そうだって言ってんじゃん」 ようやく出てきた言葉は、少しだけ語気が強くなってしまった。 『…そうか、分かった』 だけど、マコちゃんはそれ以上しつこく聞いてくるような真似はしなくて。 いつもだったら落とさないよう気をつけろだとかねちねち言ってくるくせに、なんでだ、なんで今日に限って。 優しいその声に、つい勘繰ってしまう。 そんな自分が余計嫌になってどうしようもなくなっていると、 『京』 名前を呼ばれた。 「何?」 『お前に電話した理由なんだけどな、来週の日曜のことなんだが…』 来週の日曜。 その単語に、胸の奥が一斉にざわつき始める。 そして、 『悪い、急用が入って無理になった』 「……は?」 『念のためもう一度検査しないといけないみたいでな』 申し訳なさそうなマコちゃんの声。 その言葉を理解した瞬間、全身の緊張が緩む。 たった今、マコちゃんに断りを入れようとしていた俺にとっては『助かった、マコちゃんの方から断ってくれてよかった』というのが本音なのだが。 「…そっかぁ、なら、仕方ないよね」 『悪いな、京。今度またその埋め合わせをするから』 「うん、楽しみにしてるねえ。たくさん検査して早く元気になってよ」 『……あぁ』 通話を終え、暫く携帯を眺めていた。 マコちゃん、怪我の具合よくないのかな。 本当は見舞いに行った方がいいのだろう、けれど、余計心配させるわけにもいかない。けど、会いたい。 怪我の治りは元々早い方だし、もう少し、せめてガーゼが外せるようになったら行こう。 そう、決意した矢先だった。 「仙道ー、出来たぞー」 どこからともなく漂ってくる焦げた臭いに早速食欲減退を覚えながら、俺はユッキーの待つテーブルへと向かう。 |