発信 というわけで、またユッキーの部屋に引きずり戻された俺。 携帯は手元に戻ってきたものの、やっぱりすぐにマコちゃんに掛け直すことは出来なかった。 もうちょっとだけ、もうちょっとだけ待ってからにしよう。でも今直ぐ掛け直したいし、けど、本調子ではないと悟られるのがなにより怖かった。 「仙道、腹減っただろ?すぐ用意するから待ってろ」 一人携帯と睨み合っていると、突然ユッキーがそんなことを言い出した。 「は?ユッキー作るの?」 「なんだよ、文句あるのか?」 「いや、ないけどー…出来んの?」 ユッキーとは短くない付き合いではあるが、料理している姿なんて見たことない。 「こういうのは見様見真似で結構何とかなんだよ」 不安だ。限りなく不安だ。 けれど、やる気満々になっているユッキーを止めるのも悪い。 「座って待ってろ」 しかし、どんなものが出来るのかも見てみたい。 「わかった」とだけ応え、俺はソファーの背もたれに凭れた。 手に取った携帯の履歴を開ければなっちゃんからの恐ろしいほどの着信に頭が痛くなった。 怒ってるだろうな、絶対怒られるだろうな。 思いながら、俺はマコちゃんの名前に触れる。 一息おいて、発信。 数回のコールの末、マコちゃんは電話に出た。 「…もしもし、マコちゃん?」 『……京か?』 聞こえてきた、マコちゃんの声に全身が緊張した。 酷く懐かしく感じるのはいつも聞いていた声だからか。 |