予期せぬ収穫

「それより」

と、不意によーへい君の視線が額に向けられる。


「……昨日は、ごめん。…………ありがとう」

「いーよ、別に。よーへい君だよね、ユッキー呼んできたの」

「……」

「ありがと」

「俺は何もしてない」


いつも笑顔とは無縁って感じだったが、今日は特に辛気臭いというか元気がないというか。
そんなよーへい君だからか、余計こっちは弱ってるところ見せたくないっていうか、なんというか。
「そっか」とだけ返せば、ふとよーへい君は何かを思い出したようだ。


「……あと、これ」


そういって制服から取り出し、こちらへ渡してきたのは俺の携帯だ。


「これ…どうしたの?」

「先生から預かった。…昨日渡しそびれたからって」

「ん、ありがとー」


何気なく端末を確認すればたくさんの電話やらメッセージやらで埋め尽くされている。
その中にマコちゃんの名前を見付け少しだけ動揺してしまったが、なんであれ、職員室にいく手間が省けた。


「仙道、ならもういいのか」

「そういうことになるけど…」

「なら、部屋に戻るぞ」

「え、もう?」

「用は済んだんだろ。今はあまり出歩かない方がいい」


まあ、こう言うだろうなっていうのは想像ついた。
こうなった時のユッキーは煩い。


「…んー、わかった」


ここは一応素直に従っておこう。


「じゃ、よーへい君またね」


こくりと頷き返してくるよーへい君に手を振り、別れを告げた俺はそのまま学生寮へと引き返す。



mokuji
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